ルナティックドーン 前途への道標
〜剣士【芹雄】の冒険記〜

〜 第十二章 〜

退治…そして加入


 東方都市・宿屋の斡旋所…芹雄は訓練を終えた二人の仲間と共に仕事を引き受けに来た。2週間もするとさすがに依頼は一変していた。 今回の依頼は「宅配」が3つ、「探索」が1つ、「退治」が2つ、「逮捕」が1つ。

芹雄:(やっぱタリィもんしかないなぁ…)「むぅ…お?この「宅配」、2つは【茫洋の港町】への依頼じゃねーか。」

ファンチ-ヌ:「そうなの?じゃぁやっても良いんじゃない?ねぇ藍玲。」

藍玲:「ワタシどっちでもいいアルよ。芹サンが決めたらその依頼するアルね。」

芹雄:「そうか…んじゃ、この「宅配」依頼引受けっか。」

 と、言うわけで仕事を引き受け早速【茫洋の港町】に向かう準備を始める。馬車を借り、【東方都市】をあとにする。
今回の移動は順調で、町に着くまでモンスターなど敵は一切出て来ず、9日間何のトラブルも無く無事辿り着けた。
港町に着いた一行は早速依頼を果たしに道具屋・宿屋と順に行き、達成して行った。
その後、酒場に向かい仕事を見る……と、一つの依頼書を見つけ手に取ると…

芹雄:「ふへっ…ふへひひへひゃひゃ……」

芹雄が壊れた

藍玲:「どっ…どうしたアルか!?芹雄!」

 奇声を発しながらにやにやしてる芹雄を心配し話し掛ける藍玲。

芹雄:「いい依頼見つけたゼぇ…フ…フフフ……稼ぎ時じゃぁ〜!行くぞ、二人とも!」

ファンチ-ヌ:…え?え?…な、何?どうしたの?

 酒場で情報集取していて、帰って来ていきなり「行くぞ」と言われたファンチーヌは何が何だか解らないのでうろたえる。

その依頼を引き受ける事をマスターに伝える為、斡旋所カウンターに行った。

芹雄:「マスター!この「『紅娘』退治」の依頼、引き受けるぞ!」

マスター:「ん〜…この仕事を引き受けたいって?…おぉ、芹雄さんじゃないか。あんたなら安心して任せられるな。じゃぁお願いするよ。朗報、待ってるぜ。」

芹雄:「まかせな!すぐに終わらせてやるぜ!」

ファンチ-ヌ:「ねぇ…「ほんにゃん」…って、何?」

芹雄:「あぁ…レンシアの『ケットシー(猫の化物)』の竜江モンスターだ。」

藍玲:「いよいよ退治の依頼するアルか…でもどうしてあんなに嬉しそう(?)だったアルか?」

芹雄:「んふふ…その訳はな。「ケットシー」「ナラシンハ」「猫又」は、倒しても金を落さないんだが、 なんと竜江の「紅娘(ホンニャン)」だけは金を落すんだよ。しかも1体につき2222ゴールド!」

藍玲:「えぇー!そんなに!?…ホントアルか?」

ファンチ-ヌ:「ケットシー系って、団体で出るのよね?…報酬も含めたら凄いお金にならない?」

芹雄:「あぁ、勿論。一度の戦闘で5匹以上いたら報酬が貰えると思ってもいい程だ。達成の報酬なんておまけに過ぎんナ。」

藍玲:「うひゃ〜…それは大儲けアルね…にやけた理由が判ったアル。」

ファンチ-ヌ:「…ぃよぉ〜っし、それじゃ気合を入れて行っきましょ〜ぅ!」

全員:おぉ〜!

 仕事を引き受け、気合の掛け声とガッツポーズで団結力を深めた一行はモンスターが巣食っているといわれる迷宮へと向かった。数時間後【深水の迷宮】に辿り着く。
しかし3人には金鉱に見えていた。いよいよ『紅娘』狩りの始まりだ。
中に入るといきなり輝き出す芹雄の黄金兜。周りに光る物など何も無い。どういった原理で光るのか本当に謎だ…が、今の芹雄達には本当にどうでもいい事だった。

この迷宮は3階層で結構複雑な構造をしていたが、最早、金の亡者には関係無い事であり、モンスターのシルエットを発見したらこちらから突っ込んで行くという、 襲われるのはモンスターの方で、少し可哀相な気もしてきた。
戦闘は芹雄が盾になり、後列の仲間が攻撃する…といった戦法。これなら後列の仲間には攻撃が滅多に当たらない。退治終了する頃にはかなりの経験値になった。当然、お金もがっぽり
大したダメージも受けず、迷宮内の『紅娘』の退治を達成。会話をしながら帰路につく。

芹雄:「街に帰って報酬貰ったら美味いもんでも食いに行くか。」

ファンチ-ヌ:「そうね。お金だったら大量にあるし。」

藍玲:「わーい!『バイラーダス大陸一周・美食巡りの旅』アルね!はぁはぁ…」

芹雄:「え…?い、いや…さすがにそこまでは…港町の酒場でいいっしょ?」

藍玲「え"〜!」

 物凄い嫌そうな顔をして、不満の声を漏らす藍玲。

ファンチ-ヌ:「まぁまぁ…芹雄について行ったらいつか大陸中の美味しい物が食べれるから今は我慢しなさい。」

藍玲:「……はぁ〜い…わっかりましたぁ〜っ。」

 言いながら何故か芹雄を睨む。

芹雄(えぇっ、何で!?悪いの俺なん!?)「…あ〜…なんでも好きなん奢るから気ィ直してよ。」

藍玲:「別にいらないアルよ!お金なら一杯あるアル!ぷ〜!」

 子供の様に完全に拗ねてしまった藍玲。そこでファンチーヌに耳打ちする芹雄。

芹雄:(なんで俺が悪くなってんの?)

ファンチ-ヌ:(まぁ…判る気はするけどね…仲間になってからそんなに遠くには行ってないし、美味しいものを食べてる訳じゃないし…)

芹雄:(うぐ…)

ファンチ-ヌ:(あんな事を言ったものだから、違う所に向かうと思ったのね。)

芹雄:(つーことは…藍玲の機嫌直すには…)

ファンチ-ヌ:(そういう事になるわね。)

藍玲「なに二人でこそこそ話してるアルか!?」

芹雄:「おわっち!吃驚した…」

 仲間外れになっていた藍玲がいきなり大声で話し掛けてきた。

芹雄:「まぁ…なんだ。宅配の依頼が終わったら、別の所に行こうと思う…」

藍玲:「むむっ!?それは『バイラーダス大陸一周・美食巡りの旅』に行くというコトアルか?」

芹雄:「ハイ、そうなりまス…」

藍玲:「わぁ〜い!大歓喜アル〜!」

芹雄:(くそぅ…現金な奴め!)

ファンチ-ヌ:「あはは〜…」

 (余談ですがゲーム中では実際に「紅娘退治」の依頼は出てきません。紅娘の持つ金額は本当ですが、退治の対象にはならないモンスターです。)


 そんなこんなで、斡旋所に行き報酬を受け取り今回得た全ての金を分配。かなりの額になった。そして、そこの酒場で会食。

ファンチ-ヌ:「へぇ…ここの料理、なかなかいけるんじゃない?ねぇ、藍玲。」

藍玲:「むほー!!美味い!美味いにゃりー!これも…これも!この店の高級料理、食い尽くすアル〜!」

 完全に食の魔人と化している藍玲。恐らく満足するまで話は聞いてもらえないであろう。

芹雄:「はぁ…グルメな人って皆こうなのかねぇ…」

ファンチ-ヌ:「藍玲はちょっと別格だと思うけど…」

 ふと…芹雄が視線を他方向に向けると、一人で食事をしてる女と目が合った。が、すぐ目を逸らされてしまう。

芹雄:(ん…なんだ?…あ〜…藍玲がはしゃいでるからか…)

ファンチ-ヌ:(芹雄…なんかさっきからあの女の人、こっち見てるわよ。)

芹雄:(気付いてたか。でも原因は藍玲じゃねぇの?)

 と、思ったが、どうもどうも違うらしい。

ファンチ-ヌ:(違うわね…確かに藍玲の方も見てるけど、芹雄も見てるし私の方も見てる。)

芹雄:(なんだろうな…全員見てるってことは暗殺とか強奪じゃないと思うし…)

ファンチ-ヌ:(仲間になりたいんじゃないのかな?)

芹雄:(ん…有得るかもな。ま、今日はもう遅いし明日まだ居る様なら話し掛けてみるか。)

ファンチ-ヌ:(そうね。そうしましょうか。)

藍玲「美味いにゃりー、美味いにゃり〜!」

 その後、物凄い量を食い尽くし、漸く満足した藍玲。あれだけ食って全然太ってないのだから不思議だ…
宿で一泊した次の日の朝、宿のロビー…というか酒場で昨日の女を発見。見つけたのだから昨日決めた通り話し掛ける。 近付いて来る芹雄に少し驚き、緊張する女性。

芹雄:「やぁ、どうも。おはよう。」

???:「あ…お、おはようございます…!」

 話し掛けられ、更に驚き緊張。軽い挨拶のつもりが深深と御辞儀され、ちょっと焦る芹雄。

芹雄:「あ〜…まぁ…そんな緊張しなくていいからさ。でさ、昨日酒場で俺らの事見てたけど…」

???:「す、すいません!深い意味は無いんです!ごめんなさい、ごめんなさい!」

 何度も何度も頭を下げられ、何故か物凄い罪悪感を感じる芹雄。

芹雄:「い、いや…そんな謝る事じゃないからさ。頭上げてよ…怒ってる訳でもないからさ。」

???:「あ……ご、ごめんなさい…」

芹雄:「じゃぁ…取り敢えず自己紹介をしとこうか。俺は――――」

???:「あ、知ってます。芹雄さんですよね。」

芹雄:「せり―――…って、え、あれ?知ってんの?」

奈香:「はい。それはもう…あ、申し遅れました、私は『【永遠の旅人】奈香(ナイシャン)』っていいます。」

芹雄:「あ、これはどうもご丁寧に……で、なんで名前知ってるわけ?」

奈香:「それは、この国…いえ、もう大陸中の冒険者・斡旋所の間で有名ですからね。」

芹雄:「まぁ…確かに前は一人で大陸回ってたけど…」(仲間探しでな!)

奈香:「ですから、芹雄さんと旅をしている仲間のお二人が羨ましいなぁ…って。」

芹雄:「ふ〜ん、そういうことだったのか。じゃぁさ、奈香さんも一緒に来るかい?」

奈香:「…え?…と、いうと…」

芹雄:「つまり、仲間にならないか、という事。」

奈香:「…え?…えぇっ!?い、いえ、そんなつもりで言った訳では…あ、なりたく無い訳じゃないんですけど…え…でも…」

芹雄:「まぁ、無理強いはしないよ。別に断っても気にしないからさ。慣れてるから。」

奈香:「あの…本当に仲間にしてもらえるんですか?」

芹雄:「ん?あぁ、勿論。それに君は魔法使いだろ?仲間には居なかったから丁度いい。」

奈香:「あ、それに若輩者ですから能力弱くて役に立たないから足引っ張ると思いますよ?それでもいいんですか?」

芹雄:「あ〜、そんなん全然気にしなくてオッケー。あの二人も言うほど強くないから。」

ファンチ-ヌ「そぅそぅ、弱くても気にする事は無いのよ」

芹雄「うっを!い…いつの間に!?」

 いつの間にか起きて来て後ろで話を聞いていた藍玲とファンチーヌ。

藍玲:「や〜っぱりそう思ってたアルか。」

芹雄:「い…いや〜…あの〜…」

ファンチ-ヌ:「初めまして、私はファンチーヌ。宜しくね。」

藍玲:「藍玲アル!同じ国の者同士仲良くしようネ。」

奈香:「あ…あの、まだ仲間にしてもらった訳では…」

ファンチ-ヌ:「ん〜…じゃぁさ、「仲間になりたい」という意思はあるの?」

奈香:「あ、はい。宜しいのなら…で、でもリーダーの芹雄さんが決めないと…」

藍玲:「あ〜、いい、いい。女だったら誰でもいいって言ってたから。」

奈香:「あ、そうなんですか?」

芹雄:「ちょ、ちょっと。ちょい待ち。いやいやいや。そんな事言った覚えないんですけど(間違っちゃいないが)。奈香さんも納得しない」。

ファンチ-ヌ:「ま、というわけであなたの意思次第よ。どうする?奈香さん。仲間になる?」

奈香:「はい。じゃぁ…皆さん、頑張りますのでこれから宜しくお願いします。」

藍玲:「ハイ!決まり。改めて宜しく〜!」

ファンチ-ヌ:「宜しくね、奈香。」

 そして芹雄一行の仲間が増えた。リーダーである芹雄を無視して…

芹雄:「………ま、ええか…さて、恒例のパラメータチェック…と。」
(ぬわ!?筋力26・知力50・敏捷23・魅力29て…よ…弱ッ!ま…まぁ魔法が使えるから、攻撃力は気にしなくてもいいが… おぉ?なんか経験値だけはやたらあるな。まぁ修行は後でいいか…取り敢えず装備品だな。)

 この街の武器屋にはいい物が置いてなかったので東方都市に戻ってから揃える事にした。
が、運悪く街道でモンスターに襲われる。豚男と犬男の組み合わせで、合計7匹。

奈香:「7匹…少し分が悪くないですか?」

 新参者の奈香が心配するが、先程の退治依頼で既に多数のモンスターと戦ってる3人にはどうって事は無い。

ファンチ-ヌ:「なんていうか…御約束って感じね。」

藍玲:「物足りない感じするアル。」

 と、仲間の2人が呟いてる間に芹雄が一掃してしまった。さすが忍の達人…というより、他の三人が遅過ぎるだけかも。その光景を目にして呆気に取られる奈香。

奈香:「…噂通り凄いんですね…芹雄さん。」

ファンチ-ヌ:「うん…確かに凄く強いし安心して着いて行けるんだけど…」

藍玲:「やっぱり「何もしなくていい」というのは、仲間として悲しいアルね。」

ファンチ-ヌ:「修行にもならないしね。」

奈香:「なるほど…リーダーが強すぎるというのも考えものなんですね。」

芹雄:「ちょっと待ってよ…しっかりあてにしてるっつーの!(的としてはね)それに戦闘終了したら経験値は貰えてます!」

藍玲:「ちゃんと考えてくれてるのも凄いと思うアル。」

 皆的程度にしか考えられてない…ということは可哀相な事に知らされる事なく後にパーティーから外される…


 一度戦闘はしたものの、後は何の問題も無く東方都市に辿り着く。すぐさま宿屋の斡旋所に行き、報酬を貰う。この時点で仲間が一人増えていたのでその人の分もちゃんと分配される。

奈香:「…いいんでしょうか…」

芹雄:「あぁ、気にすることは無い。これも冒険者のルールだ。それに前の仕事のお陰で金に困っていないからな。」

奈香:「そうですか…ではいただきます。」

 その後、芹雄は武器屋へ向かい【鎌槍】【腹当】【星兜】を購入し、それぞれ最大強化する。そして奈香に渡す。

芹雄:「取り敢えず、最低限の装備品を渡すから出来る限りの事はしてくれ。」

奈香:「は…はい!解りました!ありがとう御座います。」

芹雄:「え〜、では。皆さんには今日からちょっと訓練してもらい、ま〜〜っす。」

藍玲:「芹サン!『バイラーダス大陸一周・美食巡りの旅』はどうなってるアルか!?」

芹雄:「はい、それはちゃんと筋力の訓練をやってくれれば行きま〜す。ファンチーヌも当の目的達成に近付くからいいだろう。」

ファンチ-ヌ:「…そうね。じゃ、やりましょうか。」

芹雄:「じゃ、いってらっしゃ〜い。」

奈香:「では、行って来ます……って、芹雄さんは行かないんですか?」

藍玲:「芹サンは特別だから訓練する必要無いアルよ。」

 そして3人は修行場へ向かって行った。芹雄はまた暇な日を過ごすのであった。

 新たな仲間を加えた芹雄一行。新展開を見せる……のであろうか?
藍玲お楽しみの『バイラーダス大陸一周・美食巡りの旅』は本当に実行されるのであろうか!?
それは………………次回の御楽しみ!


第十二章

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