ルナティックドーン 前途への道標
〜剣士【芹雄】の冒険記〜

〜 第十三章 〜

建国記念宝くじ


 バイラーダス暦974年1月上旬…東方都市のとある宿屋。なんの締まりもない顔でのほほんと座っている超人級能力者芹雄。 仲間の三人は訓練の為一緒に居ないので、全員修行を終えるまでただボケーっと日がな一日過ごすばかりであった。
 そんな退屈な日々だったがこの日…1/16日にその出来事は起こった。
外で何やら騒がしいのに気付き、宿屋の主人に訊く芹雄。

芹雄:「なぁマスター、一体なんなんだ?この騒ぎは…」

マスター:「え? 何って…お前の好きなアレに決まってるじゃないか。」

ボッ!
何故か顔を赤く染める芹雄。

芹雄:「そッ!そんな、マスター!やだなぁ、こんな真昼間から…アハハハハハ。」

マスター:「…はぁ!?」

芹雄:「……で?どうなのよ。ココだけのハナシ……美人?幼女系?」

マスター:「…いや…あのな?」

芹雄:「ン、もー。マスターも人が悪いなぁ!昨日の晩に知らせてくれてもいいジャンよー。」

マスター:「だから。違うって…」

芹雄:「え? 違う? ってーと…あ、判った!妹系だ!フヒヒ…マスター好きだもんなぁ。」

マスター:「フぅ…俺が悪かったから。そんな身を乗り出して本気で訊いて来ないでくれ…」

芹雄:「あん?」

マスター:「アレって言うのは、【宝くじ】のことだよ。今日は建国記念日だ。」

芹雄:「あ…あぁ。なんだ…ソレか…ちぇ。ガッカリだよ………………ん?けんこくきねんび…?」

マスター:「オイオイ…毎年これの為だけに訪れる奴の言う事か?」

芹雄:「宝くじだとぅ!?こうしちゃおれん…1等貰ってこなければ!!」

マスター:「どわ!?お、おい!」

 そしてダッシュでくじ売り場に向かう芹雄であった…

マスター:「おーい…はぁ…やれやれ。たまには他の奴にも1等くれてやれよなぁ…」

 マスターの呟きは4つの国の全建国記念宝くじにも言える事である。芹雄は基本的に暇人なので毎年… というか毎回全ての建国記念日に首都に現れては1等商品を当選(奪って)行くのである。なので他の人々は良くて2等止まりなので可哀相なのだ。
…それでも規制も掛からないし毎年同じように催されるのは一体どういう神経をしているのだろうか…?実行委員会の人達は…

くじ屋:「今日は日紫国の建国記念日じゃ!!建国記念の宝くじが1枚100Gで買えるのじゃが、あんた…どうかね?」

芹雄:「よし、買おう。」

くじ屋:「宝くじを買う前に説明を聞いておくかね?…ん?おぉ。なんじゃ。おぬし芹雄ではないか?いつもの気迫はどうしたんじゃ?」

芹雄:「今回は説明を聞かねばならんのでな。」

くじ屋:「? 何故じゃ。今まで一度も聞かなかったクセにのぅ。」

芹雄:「………なんとなくだ。」(ポッ)

 「ゲームを知らない人の為に」という事は思っても口にしない芹雄。思わず顔を赤くする。」

くじ屋:「…まぁいい。その赤い顔に免じて今回は特別にタダで説明してやろう。」

芹雄:「うむ……む? 何ィ!?説明するのに金取ってんのか、アンタ!」

くじ屋:「いや。普段はタダで説明しておる。金を取るのはおぬしだけじゃ。」

芹雄:「こ…このクサレハゲジジィ…」

くじ屋:「あ"?」

芹雄:「イエ!何でもありません!どーぞ、説明してください。」

くじ屋:「ふん…まぁ良いわ。心して聞くのじゃぞ?」

 とか言いつつ、説明するのが嬉しいのか嬉々として語り始めるくじ屋のジィさん。
やっぱりお爺さんは寂しいんだね…ホロリ

くじ屋:「まず初めに好きな番号を三桁選ぶ(入力する)のじゃ。その三桁の数字が全て当たれば1等、下二桁の数字が当たれば2等、下一桁の数字が当たれば3等じゃ。
宝くじは選んだ数字から連番で100枚まで買うことができるぞ。まぁ、1等を当てたいのなら、たくさん買ってみることじゃな……」

芹雄:「ふむ。長いようで短い説明有難う。」

くじ屋:「『沢山買ってみろ』というのはお前さんには余計な一言だったな…」

芹雄:「判ってるではないか。さすがだな。では100枚貰おうか。」

くじ屋:「あいよ。番号は適当で良いんじゃったな。

 セーブしてるので外れてもやり直して1等を当てるまでやるので決める番号なんてないのである。
100枚のくじを持って当選会場に入る芹雄。

一般人:「うわぁ!また来たぞー!くじ帝王だー!」

 どうとって良いのか判らない微妙なあだ名を付けらていれた

芹雄:「ふふふ…愚民共。悔しかったら1等を取って見せなさい!無理だろうがな…フハハハハハ!!」

 ノせられて有頂天になってるし…

ファンチ-ヌ:「あら?…芹雄じゃないの。あなたも宝くじ?」

芹雄:「…お?ファンチーヌじゃねーか。」

奈香:「こんにちわ、芹雄さん。奇遇ですね。私達もなんですよ。こういうお祭事は楽しくていいですね。」

芹雄:「あら?奈香も一緒か。」

藍玲:「ウフフ…1等はなんでも究極の食べ物らしいアルね…絶対に当てて見せるアル…そして…あうう、あうう…」

芹雄:「おやおや。藍玲も…っておい!藍玲!しっかりしろ!傷は深いぞ!?それに、アレは食いもんじゃないぞ!!」

 ちなみに…1等の商品はこれまで芹雄が当ててきたものは「老若丸」。藍玲は何を勘違いしたか究極の薬を究極の食べ物ととったらしい。グルメ過ぎなのも考え物である。
で、効果なのだが、飲めば1〜4歳若返るという何とも素敵な薬である…が、副作用に1歳老ける場合もあるので使用上の注意をよく読んでからお使いください。 セーブロードを繰り返せば必ず手に入れる事の出来るアイテムである。

芹雄:「ところで…君達、訓練はどうした?」

奈香:「今日の訓練はもう終わったんです。訓練所の皆さんもこのお祭が気になって集中できなかったみたいで…」

ファンチ-ヌ:「そーそー。折角人がやる気になっているって言うのに……ねぇ?」

芹雄「嘘吐け…」

ファンチ-ヌ:「………聞こえてるわよ。せ・り・お・す、さん?」

芹雄:「オ〜ゥオウオウ。ノ・ノ・ノ。ブレイクブレイク。どぅどぅ。」

ファンチ-ヌ:「フン! …まったく。」

奈香:「フフフッ…仲の良いパーティですね。」

藍玲:「あはは。やっぱ、みんな揃うと楽しいアル。」

芹雄:「ん?…そうだな。お、番号発表するみたいだぞ。」

ミス・日紫:「お集まりのみなさ〜ん、長らくお待たせ致しましたぁ〜。」

 『ワァァァァァァァァ!!』
色んな声が交じり合った、大歓声が巻き起こる。

ファンA:「雛子ちゃ〜ん!こっち向いて〜!!」

ファンB:『エル・オー・ブイ・イー!ひ・な・こォ〜!』

 中にはこういう宝くじ目的ではなくミス・日紫の姿を拝む為だけに来た変なのも居る。

ミス・日紫:「只今より日紫建国記念宝くじの当選番号抽選会を行いま〜す。」
「当選番号は……」

 会場は一瞬にして静まり返る。何故か追っかけの連中までつられて黙り込む。

ミス・日紫:「736番です!」

芹雄:「よっしゃぁ!今回もイタダキだぜ!!」

 ……と、まぁ1発でいけば良かったんですが、何度かやり直しました。

ファンチ-ヌ:「キャー!すごーい!!1等を当てるなんて、芹雄!やったわね!!」

芹雄:「あ、あぁ…あはは。」(何度かやり直しましたけど…)

奈香:「能力だけじゃなく、運も強いんですね!」

芹雄:「そ…そうかな?」(何度も外しましたけど…)

藍玲「究極の食べ物って美味しいアルか!?」

芹雄:「美味い不味い以前に食べ物じゃないって」

 藍玲には冷静に突っ込んでおく

ミス・日紫:「では、まず3等賞の当選者の方〜、6番のくじお持ちの方は賞品を御渡ししますので舞台の前に来てくださ〜い!

 言われた通り、その場に向かう。さすがに一桁だけというのは物凄い人数が来た。
何故か仲間達も一緒に……

芹雄:「……なぁ?……聞かなくても判ってるけど…」

ファンチ-ヌ:「じゃぁ訊かないで。」

芹雄:「ん〜…」

奈香:「あの…私達全員20枚ずつ……」

ファンチ-ヌ:「奈香さん?…あまり要らぬ事を仰ると痛い目を見ますことよ……?」

奈香:「あっ!あの…ご、ごめんなさい…気をつけます…」

芹雄:(こわ…)「…ん?ところで藍玲はどうした?」

奈香:「あぁ。藍玲さんなら…ほら、あそこ。賞品が気になってさっさと並びに行ったのでもう貰ってます。」

芹雄:「あ〜…そりゃ可哀相に…」

奈香:「え?どうしてですか?」

芹雄:「あいつ、多分賞品は食べ物だと思ってるぞ。」

ファンチ-ヌ:「芹雄は何が貰えるのか知ってるの?」

芹雄:「……知ってるけど、話聞いたらお前らもガッカリするぞ?」

奈香:「…な、なんでしょうか…」

 ≪うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ん≫
鳴き声が遠くから聞こえた。

芹雄:「実は3等の賞品は――――」

藍玲:「うわぁ〜〜〜ん、芹さ〜〜〜ん…こんなの要らないアルよ〜〜〜!!」

≪ズゴシッ!≫

芹雄「おぷっ!」

芹雄の側面から【手盾】を二つ持った藍玲が突進して来て、モロに食らった芹雄。ちょっと吹っ飛んでふと思った。

(これが特殊技能【チャージアタック】か…)、と…

芹雄:「…――――と、言うわけだ……判ったかな?」

 地べたに倒れながらも喋り続ける芹雄に馬乗りになり手盾を両手で持ち芹雄の頭を泣きながらバシバシ叩く藍玲。

芹雄:「他っ、にもっ、鉤づっ、めとかっ、毒っ、牙のまっ、がたまっ、とか…あ〜、もう藍玲!」

藍玲:「ふにゅううう……」

芹雄:「飯が美味い店知ってるから後でみんなで行こう。な?」

藍玲:「………うん。」

芹雄:「で―――だ。3等は500G相当の「冒険者向けの」商品が貰えるんだ。この国では鉤爪・手盾・面具・毒牙の勾玉がそうだな。」

ファンチ-ヌ:「じゃ、じゃぁ…2等は……?」

芹雄:「ん?なんだ。ファンチーヌ2等当たったんだ。やるじゃないか。」

ファンチ-ヌ:「え!?いや…あはは。」

奈香:「あ、別に気にしなくていいんですよ?最初に約束しましたから。「誰が当選しても恨みっこなし」って。」

芹雄:「ふ…良い仲間を持ったもんだな?ファンチーヌさん?」

ファンチ-ヌ:「も…もういいじゃないの。教えてよ。」

芹雄:「それは…2000〜3000G相当の物だから…脇差じゃないか?」

 (ご〜〜〜〜ん)

間違いなく今、ファンチーヌの頭の中で大鐘が鳴り響いたであろう。固まってしまうファンチーヌだった。

芹雄:あらら…ま、無理もないか…

 そして全員3等の賞品を受け取る。芹雄に至っては、9つもある所為か、不要な物はその場で捨てた。
不要な物…全部か
2等の賞品を受け取るファンチーヌ…笑ってはいるが嬉しい時にする笑顔ではなかった。何かを諦めた時にする笑顔だ。

そしていよいよ1等賞を贈与される時がやって来た。呼ばれて壇上に上がる芹雄。
当然、今回も芹雄は老若丸だと思っていた。しかし、いい加減倉庫にも溜まってきたし要らなかったかな?と、不謹慎な事を思う。
しかし…

ミス・日紫:「おめでとうございます〜。1等大当たり〜!今回はぁ…え〜と……?
【だんじょんれぇだぁ】?…の当選です〜!!」

  『ワァァァァァァァァ!!』
再び歓声が上がる。

芹雄:「…え。……何? だ…ダンジョンレーダー?」

ミス・日紫:「はい、どぉぞ〜。」

芹雄:「あ…ど、どうも…

 なんとも良く判らないような呆けた顔をしたまま仲間の元に戻る芹雄。

藍玲:「芹サ〜ン…究極の食べ物じゃなかったアルかぁ〜?あうぅ〜…」

 滅茶苦茶期待してた藍玲が無茶苦茶ガッカリする。

奈香:「ら、藍玲さん…さっきから芹雄さん言ってたじゃないですか、「食べ物じゃない」って。」

ファンチ-ヌ:「どんな時も相変わらずねぇ、藍玲ってば。で、芹雄!なになに?どういう物なの?…見た目は只の丸い鉄板ね…あ、赤い突起が突いてる。」

 その一言を聞いて我に返る。そして改めて入手したアイテムを眺める。

芹雄:「これは【ダンジョンレーダー】といって、ダンジョンの内部の情報を表示する魔法のアイテムだよ。」

奈香:「えっ…情報って、ダンジョン内の地図ですか?」

芹雄:「いや…残念ながらさすがにそこまで便利じゃない。敵の位置・宝の位置・罠の位置が判るという物だ。」

藍玲:「食べ物の在り処は判らないアルか?」

芹雄:「判るものか!……あ、いや…「チーズ」や「忘れられたワイン」とかあるから反応するな。
良かったな、藍玲!食べ物も判るぞ!

藍玲:「ホントアルか!? わは〜♪

 そんなどうでもいい小さな事だが藍玲は喜んだ。
そんな無邪気な笑顔で喜ぶ藍玲の姿を見て芹雄は微笑み…
そして思うのだ…

芹雄(こいつやっぱりグルメなんかじゃなく、只の食いしん坊万歳!なんじゃ…?)

 と…

ファンチ-ヌ:「まぁ、何に反応するのかはいいとして。凄い物が手に入ったわね。」

芹雄:「ただな…魔法のアイテムなんで魔力を使うんだ…しかも相当量。」

奈香:「え…それは…芹雄さん、かなりの負担になるのでは…?あ。私魔力のお薬を買って補助しますね。」

芹雄:「はは…ありがとう。でもそんな何度も使う程潜っていないだろうし、万が一の時は休憩とかするから。」

ファンチ-ヌ:「ま…兎に角。これでますます冒険し易くなったわね。次の仕事が楽しみだわ。」

奈香:「あ、わ…私、芹雄さんの足を引っ張らないように頑張ります。」

藍玲:「あ、抽選会もう終わりみたいアルね。じゃ、食べに行くアル〜!」

芹雄:(ちぃッ…覚えてやがった!!)じゃぁ案内するよ。」

 と、いうわけで飯が美味い店に3人を案内する。その道中、改めてダンジョンレーダーを見、思う。

芹雄:(宝くじの賞品だったのか…道理で見つからん筈だ。)

 4人全員で少しだけ久し振りな会食を済ませ、店の前で別れた。3人は明日のから再び始まる訓練の為、訓練所の方へ… 芹雄は明日から再び始まる堕落生活の為宿屋へ…
次回、いよいよ別の地へ向かう一行。その先に待つのは一体何のなのか…?本当に「大陸一周美食巡りの旅」になってしまうのか!?
次号、待て!


第十三章

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