ルナティックドーン 前途への道標
〜剣士【芹雄】の冒険記〜

〜 第十五章 〜

迷宮入り


 
ファンチ-ヌ:「芹雄。この後はどうするの?」

 次の日、全員が酒場に集まった時にファンチーヌが訊ねてきた。

芹雄:「うむ。それなんだが仕事を受けないで、ダンジョンに潜ってみようと思うんだ。」

藍玲:「偽善活動アルか?」

奈香:「ら、藍玲さん…そんなはっきり…」

芹雄:「あのな……先日ダンジョンレーダーも手に入った訳だし、早速使ってみようかな?と思ったわけさ。」

藍玲:「なるほど。ちゃんと冒険するアルね。何処に行くアルか?」

芹雄:「おう。先程依頼の一覧を見た所、前王の城跡は退治で埋まってるから無視するとして、他の3箇所は空いてるのでそのどれかに行こうと思う。」

ファンチ-ヌ:「…新しいアイテムの効果を知りたいという理屈は判ったけど、なんで潜る必要があるの?入るだけ入って確認したら出てきても良いんじゃない?」

藍玲:「そうアルね。仕事でもないのに行ったら時間と労力の無駄じゃ無いアルか?まぁ敵を倒せば経験値は貰えるケド…」

芹雄:「ん〜…まぁ、修行の一環って奴で。弱かったら弱かったで、その時はもう終わるよ。そういう弱いモンスターの守る宝なんて高が知れてるからな。」

藍玲:「それって、『宝が目的です』って言ってるようなものじゃないアルか?」

奈香:「ちょっと意外ですね。でも普通の冒険者らしい意見だったのでちょっと安心しました。」

ファンチ-ヌ:「そういえば、そうね…若い女の人にしか興味が無いと思ってたけど、そうじゃなかったのね。」

芹雄:「滅茶苦茶言いやがる…しかし言い返せない自分が悲しい…」

 ちょっと凹む芹雄。

芹雄:「で、何処に行こうか。『鍾乳洞』『暗黒教会』『儀式の迷宮』の3つがあるが。」

ファンチ-ヌ:「…って、そういきなり訊かれても答えられないわよ…あなたじゃないんだから。」

藍玲:「そうあるよ。ワタシ達まだまだ新米冒険者アルね。」

奈香:「私もダンジョンに潜った事は無いのでよく判りません…」

藍玲:「芹さんのお勧めは?」

芹雄:「なんだ…結局俺が決める事になるのか……んーと…やっぱり1階層の『暗黒教会』かな…楽だし。ではここにするが、皆、異議はあるか?」

三人:「異議なし。」

芹雄:「では準備が出来次第、街の入口で落ち合う事にする……では解散だ。」

ファンチ-ヌ:「判ったわ。じゃ、また後でね、みんな。」

藍玲:「再見〜。」

奈香:「はい…では芹雄さん、また後程…」

 そして全員、宿の自分の部屋に帰って行った。芹雄も部屋に戻り荷物を持って部屋を出た。
下に降りて宿を出る時にマスターに挨拶をする。

マスター:「お、行くのか?芹雄。」

芹雄:「あぁ…行くことは行くが今日中には帰って来ると思うよ。」

マスター:「なんだ? …あぁ、迷宮探索か。」

芹雄:「そゆ事。じゃ、ちょっくら行ってくらぁ。」

マスター:「気を付けてな…って、お前に言う事じゃないか。」

芹雄:「精々、仲間を死なせないよう気を付けるさ…」

 そして、宿を後にして、雑貨屋に向かい食料と水を買う。

芹雄:(う〜ん…二日はかからないだろ…)

 1日分の食料を一人分…で済ませる筈だったが、嫌な予感がしたので2人分買った。そして街の入口に向かった。
(今回のルナドンでは…ゲームだから仕方がないのだが食事という概念は無いので、別に上のような事はないです。そもそも雑貨屋がない。 他にも、ある程度探索したらキャンプ張るなりして休息するところですが、ゲーム中は寝る事なく探索します。一応、「休憩」というシステムはありますが体力・魔力回復用です。)



 集合予定地に着いたが、まだ誰も来てないようだ。門の下に座って壁に凭れ掛って休む。

芹雄:(でけー門だな…さすがにこれだけデカかったら閉められたら何者も入って来れないだろうな… 閉められる深夜までには帰ってこないと…)

 今は開けられて収められている門を見ながら、そんな事を思うが、ふとそれを軽く凌駕する存在が頭を過った。

芹雄:(四大精霊…地方最強モンスター…悪魔四天王とそれを統べる魔王…か。そんな存在が現れたら門だけじゃない、この高い塀も全く意味が無いんだな…)

 改めてその存在達に対しての恐怖が出て来た。

芹雄:(前回(開かれた前途)は二匹の最強モンスターと悪魔五体を倒す事が出来た…しかしそれはバランスがまだ悪かったからだ。 チャームタロット…それが今回全く効かない…このステータスをもってしても、勝てるかどうか判らない。今回(前途への道標)普通の討伐で苦労するんだからな…)

 最初の討伐依頼でのブルードラゴンと対決した時の事を思い出す。その時は運良く特殊能力を使われること無く物理的な攻撃のみだったので一人でもそれほど苦戦しなかった。 しかし、一度その能力『フラッシュフラッド』(大水鉄砲)を食らえば体力の約3割削られるのだ。倒すまでに3〜4回は食らう。 今でこそこの服のお陰で3割になっているが、前回着けていたミスリルアーマーではかなりのダメージだったであろう…果たして、それよりも強い強大な魔物達に勝てるのであろうか…

藍玲:「どしたアルか?芹さん…ボーっとして…」

 いつの間にか、準備を整えた藍玲が集合場所に来ており、芹雄の顔を覗きこんでいた。
考え事をしていた芹雄は藍玲の気配に全く気付かなかったようだ。

芹雄:「おわッ!? あぁ、なんだ。藍玲か……ん?藍玲だけか? 他の二人は?」

藍玲:「準備に手間取ってるようだったから、先に来たアル。」

芹雄:「なんだ? 俺に会いたかったのか?」

藍玲「まさか。」

芹雄:「えらくハッキリ言うね…まぁ、冗談だったけど。」

藍玲:「うん、冗談冗談♪…えへへ♪」

 そう言って、芹雄の横に腰を下ろす藍玲。

藍玲:「…ん、しょっと… ねぇ、さっき何考えてたアルか?」」

芹雄:「ん? …あぁ……なんていうかな…まぁ、強いて言えば『上の存在』のことかな?」

藍玲:「…芹さんより強いモノってこと?」

芹雄:「あぁ。俺でも勝てるのかどうか判らない。」

藍玲:「そ、そんなに強いアルか?」

芹雄:「そうだな。でも負ける訳にはいかない。全てを倒し、制覇する…それが俺の夢でもあり『ここ』に来た意味でもある…」

 知らず知らずの内に熱く語ってしまっていた芹雄。すぐ我に返り話を変える。

芹雄「目標は違うけどな」

藍玲:「芹さんの持ってる目標って「冒険者」のものじゃないもんね。

 ハッキリといわれるとちょっと胸に突き刺さる物がありますが…

奈香:「す、すいません…お待たせしちゃって…ふぅ…ふぅ。」

 走って来たのか、奈香が呼吸を荒げて集合場所に来た。

ファンチ-ヌ:「はぁ…はぁ…。もぅ、別に時間決めてなかったんだから慌てなくて良かったのに…はぁ…」

 つられて走ってきたファンチーヌ。体力は奈香よりはあるのだが、息の荒げ様は奈香以上だ。見るとファンチーヌは凄い荷物を背負っている。

芹雄:「まぁ、時間決めてなかったのは確かだから待つのは構わなかったんだが…ファンチーヌ…」

ファンチ-ヌ:「っはぁ…なに…? はぁ…」

芹雄:「その大量の荷物は一体何だ?」

ファンチ-ヌ:「…何って……迷宮に何日も…潜り込むんだから…キャンプ用品と…何日分かの食料を…」

芹雄:「あの…言ってなかったっけ? 『一階層』だって…」

ファンチ-ヌ:「え? あれ…? そうだっけ…」

奈香:「だから要らないって言ったのに…」

 どうやら、一緒に買いに行って注意したんだろう。奈香が溜息交じりに言った。

芹雄:「それにキャンプ用品くらいだったら、本来リーダーである俺が用意するだろう?」

奈香:「それもそうですね。」

ファンチ-ヌ:「うー……」

芹雄:「…それとも何か? 俺のことリーダーだとは思ってないと…?」

ファンチ-ヌ:「そんな訳無いでしょ! …ちょっと聞き漏らしただけよ…」

藍玲:「でも、どうするアルか?この荷物。一応持って行く?」

奈香:「…かなり重そうなんですけど……」

ファンチ-ヌ:「一応持てない事は無いけど、邪魔ではあるわね…」

芹雄:「…まぁ、今から宿に帰って置いて来るのもなんだし、持って行くか。」

 そう言って、ファンチーヌから荷物を取り上げ、背負いこんだ。

ファンチ-ヌ:「あっ… 有難う…」

藍玲:「おやおや? 芹さん、得点稼ぎですかいのぅ?」

奈香:「優しいんですね。」

芹雄:「…女に重い物持たせる程愚かではないからな…」

 ――と言ってるが、只単に女に甘いだけである。
そうして、街を出て目的の『暗黒教会』に向かう芹雄一行。


 日紫国・東方都市から少し離れた丘……
禍禍しい雰囲気を醸し出している黒い建物が見えて来た。この黒い建物が『暗黒教会』である。モンスターが徘徊する今では建物の外観は荒廃しているものの、 暗黒神を崇拝する宗教が盛んだった頃は、綺麗に整っていた事であろう。
 ――――『暗黒教会』入口――――

奈香:「これが暗黒教会……不気味な感じがしますね…」

ファンチ-ヌ:「ここに来る少し前まであんなに明るかったのに、来た途端に真っ暗になったわね…この教会の呪いみたいなものかしら?」

藍玲:「う〜…嫌な雰囲気アル〜…」

 ≪ギャァッ、ギャァッ!バサササッ…≫
非常にカラスの似合う建物であった。

芹雄:「さて…ダンジョンレーダーの効果を…」

≪カシッ…ピンッ!≫

芹雄「うぐぉッ!?」

ファンチ-ヌ:「!? どうしたの!?芹雄!」

芹雄:「い…いや、心配無い。大丈夫だ… 予想以上に魔力を吸われたんでちょっと吃驚した…」

奈香:「それならいいんですが…本当に大丈夫ですか?」

藍玲:「ワタシ達は芹さんだけが頼りだから…無理はしないで…」

芹雄:「あぁ、心配かけて済まん。大丈夫だから。」

 芹雄だから大丈夫なわけだが、一般人が使ったなら頭痛を感じる程の消費量だった。
改めてダンジョンレーダーを見る。しかし…

芹雄:「んん? なんだこりゃ?」

 ダンジョンレーダーと呼ばれる鉄板からは立体映像が現れていた。しかし何も映っていないのでサッパリ判らなかった。芹雄の声に反応して仲間が覗き込んでくる。

藍玲:「…この点には何の意味があるアルか?」

ファンチ-ヌ:「…点?… あぁ、確かに。でも地図が表示されないんじゃ何が何だか判らないわね…」

奈香:「地図とそれの両方を見ながら…って事でしょうか?」

芹雄:「う〜ん… この『自動地図作成板』に反応すればなぁ…」

<セリオス>:[説明しよう!]

芹雄:(お前はしなくていいよ。ナレーションに任せ…)

<セリオス>:[うぅ…芹さん冷たい…しくしく。]

 『自動地図作成板』とは、主人公にのみ与えられたオートマッピング機能を持つ薄い板。ダンジョンに入った後、視界に入った部分を自動で書きこみ記憶してくれる便利な物。 ちなみに、他にも主人公には『時計付き敵感知便利板』という物も与えられる。これには地名・日付・時計だけでは無く、今使ってる照明具の持ち時間、更にはダンジョンに巣食うモンスターの数(大方)を感知する機能が付いている。 街に戻ったら、その街での自分の知名度とその街の勢力まで判る。これで、アイテムストックの内に入らない便利な物…っていうか、そういう仕様のゲームです。ちなみにそれらには固有名詞なんて無いです。 敢えて言うなら『インフォメーションウィンドウ』ですか。

ファンチ-ヌ:「ふ〜ん…変わった物を持ってるのね…」

芹雄:「ん? あぁ、まぁな。「特権」ってやつ?

奈香:「う〜ん…どうなってるんでしょうか… 他にも機能あるのかな……? あッ!?」

藍玲:「どしたアルか?奈香?」

奈香:「これ…ここに何か挿し込むような隙間があります!」

藍玲:「…ホントだ。? これって…芹さんの持ってるそれと、幅合いそうアルね。」

芹雄:「何っ!?ちょっと貸してみ…」

 ダンジョンレーダーを受け取り、自動地図作成板を挿し込むと、何も映ってなかった立体映像に地図が表示された。

芹雄:「おぉ…こういう仕様になっていたのか…便利じゃないか。」

ファンチ-ヌ:「たしかに便利だけど…他の人が使っても意味無いんじゃ…?」

 ………………………確かに。
無いですね♪


おぉっと!?意外にも長くなってしまったようだ!今回はここら辺で勘弁してくれ!
次回、暗黒教会に入った後、巻き起こる事件…の予定だけど何も考えてないゼ!一体何が起こるのか!?
以下次号ッ!


第十五章

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