ルナティックドーン 前途への道標
〜剣士【芹雄】の冒険記〜

〜 第十八章 〜

剣闘会



 2/2・東方都市。芹雄一行の宿泊している宿屋の酒場。朝食を済まし、今後についての会話―――

芹雄:「…申し訳ないんだが、予定が出来たのであと最低1周間はこの街に滞在する事にした。」

ファンチ-ヌ:「そう。わかったわ。じゃぁ、私達はまた訓練にでも行ってこようかしら。」

奈香:「でも、芹雄さんに予定が出来るなんて余程のイベントなんでしょうね。」

藍玲:「イベントアルか!?何々!?大食い・早食い大会?料理対決の審査員?高級料理の値段当て?世界の珍味大集合?

芹雄:「違います。なんで食うことばっかりなんだ…あのな。6日後の2/8に、この街で8年ぶりに剣闘会が開かれるんだよ。それに出ようと思う。」

ファンチ-ヌ:「剣闘会ですって!?そうか…今年はここでやるんだ…どうしよう…私も出たいな…」

奈香:「剣闘会…て、あれ…ですよね?一人で戦う…」

芹雄:「あぁ。勝ち抜く毎に敵が強くなって行く。」

奈香:「じゃぁ、私はパスです…応援を頑張ります。」

藍玲:「ワタシもそういうのはパスするアル。見てるだけでいいヨ。」

ファンチ-ヌ:「私は…やっぱり出てみるわ。1つの夢だからね。」

芹雄:「じゃぁ、今回の訓練はパスか?」

ファンチ-ヌ:「ううん…一応やるわ。でも軽めに、だけど。その日に備えて鍛えないと。」

藍玲:「う〜ん…ファンが燃えてるアル…ファン、ワタシしっかり応援するアル!」

奈香:「凄い気迫を感じますね。頑張ってください、ファンチーヌさん。」

ファンチ-ヌ:「ありがとう、二人とも…」

藍玲:「よ〜し、じゃ、早速訓練に行くアル〜っ!」

≪ガタッ!≫

芹雄:「あ〜、ちょっと待て。」

藍玲:「…って、アリリ〜?」

 行く気マンマンだったのに、急に止められたので、思わずズッこける藍玲。体は倒れないが、足が前に出た…
≪ズル〜ッ…ガッ!≫
 丁度いいタイミングで前を歩いていたマスタ−。料理を運んでいるようだ。足が出てきたのに気付かず、モロに躓く。

マスター:「おわっ!?わっ、ま"ッッ!!

 ≪ズごシッ!…ヒュー…ン≫
思わず手に持ってた料理を投げ飛ばす。受け身を取ることも出来ずに顔から落ちる。
飛んで行った料理は…
≪ガンッ!ビシャ!じゅぅー………≫

芹雄:「痛ッ、熱ッ……あぢゃ―――――ッ!!!

 幸か不幸か、被害に遭ったのは芹雄だった。

マスター:「ぐ、ぐおおぉぉぉぉぉ〜〜〜ッ!! 鼻が、鼻が……」

芹雄:「ぎ―――――にゃ――――ぁぁぁぁ!!!あぢゃぁぁぁぁぁ!!!」

 暫く、酒場内は軽いパニックに。マスターと芹雄は騒ぐ、注文が来ない・注文訊きに来いと客は怒る。 一人欠けたので料理が追い付かないので困る女将。入口で並ぶ客と、野次馬の列……

 なんとかその場は、芹雄の仲間3人が手伝って事無き(?)を得た。

 

 一段落ついて―――――

藍玲:「まったく…芹さんの所為で無駄な労力使っちゃったアル…」

芹雄「俺の所為かよ!?」(ミムラ)

ファンチ-ヌ:「あ〜ぁ…修行したかったのにこんな事で1日潰しちゃったわぁ…芹雄の所為で。」

芹雄「やっぱり俺かよ!?」(ミムラ)

奈香:「でもお二人とも、楽しそうに接客してましたよね。笑顔が輝いてましたよ?」

芹雄「楽しかったのかよ!?」(ミムラ)

女将:「取り敢えず芹雄さん、料理代・修理代・弁償金…しめて100G頂きますね♪」

芹雄「それも俺なのかよ!?」(ミムラ)

マスター:「俺の治療代も合わせると500Gだな。」

芹雄「ヤ○ザかよ!?」(ミムラ)

 なんでこんなに安い値段…?と思われるかも知れないが、首都の宿代が1泊20Gなんだからこんなもんだろう…
それと…何故藍玲を止めたのか…は、一応訓練中に顔を出す、と言う事と、当日の待ち合わせ場所を決める事。
待ち合わせ場所はこの宿屋の酒場に決まった。


 次の日の朝、三人は訓練所に行った。芹雄は剣闘会に向けてトレーニングを
するわけもなく、ただ、街中をぶらぶらと歩いていた。
見知らぬ道をしばらく歩いていると、首都にしては規模が小さい寺院を見つけた。外見もあまり良くない…しかし…どこか知っている気を感じた。

芹雄:(なんだろう…この気…最近のような…ずっと昔のような…うぅ……)

 寺院の前で頭を抱え、考え込む。

???:「…何方ですかな?この寺に何か御用で…」

 ここの住職だろうか、御坊様が玄関から出てきた。

芹雄:「あっ…いえいえ。特に何でも無いです。ちょっとデジャヴュを感じて…」

???:「で…でじゃ…?」

芹雄:(あ、しまった。)「あ…何処かでこんな事があったような〜、っていう気分になる事で…」

???:「ほぅ…それをこの寺で感じましたか。それは少し興味がありますな。お話、聞かせ願えませんかな?」

芹雄:(うぬ…まぁ…暇だし)「いいか。判りました。お話しましょう。」

???:「ここではなんですな…中にお入りください。まぁ、汚い寺ですが…」

芹雄:「いえ、気にしませんのでお構いなく。」

多治見:「おぉ…これは失礼…私はここの住職で多治見定清と申す。」

芹雄:「あ、俺は芹雄といいます。」

多治見:「ふむ…芹雄殿か…」

 軽く話をしながら寺の中を歩く。外から見たら小さく見えたが、中はそれなりに広かった。そして、さっきからずっと感じる気…
絶対に知ってる……芹雄は確信していた。過去にこの気を感じた事がある。
しばらく歩いて、本道に通される。座布団を敷かれ、その上に座るように勧められる。

芹雄:「じゃ、失礼して…」

多治見:「して…さっきの話だが…」

芹雄:「え? あ、えぇ…過去にこの寺に漂う気と同じ物を過去に感じた事があるんです…それが何かちょっと今は判らなくて。」

多治見:「気…ですと? 芹雄殿はこの気を感じ取れるのですか。しかも過去に同じ気を感じたことがあると…?」

芹雄:「え? えぇ。何時かも判りませんが…」

多治見:「むぅ………」

 住職は黙り込んで…正確には唸りながら…何か考え事をし始めた。
しばらくすると急に≪ぱぁん!≫と平手で腿を打つと、

多治見:「よし…あなたなら良いでしょう…過去にも通った事があるようですし。」

芹雄:「はい? あ…あの?何がですか?」

多治見:「まぁ…ついて来なさい。そうすれば貴殿の頭の中の靄が晴れます。」

芹雄:「は…はぁ…判りました。」

 立ち上がって、何処に行くのかと思ったら仏像の裏に回った。何故か仏像の背中に鍵穴らしき物を見つけた。そこに…和尚は袈裟から鍵を取り出し、その鍵穴に挿し込み、回した。
≪ガチリ…ゴゥン…ギャキィィィィ〜……≫
 凄い音と共に仏像の背中…というか金属の扉が開いた。中には梯子が設けられていた。地下に続いている。

芹雄:「うっ!?」

 感じていた気が一気に大きくなった。別にどこかに痛みが生じる訳ではないんだが、いささか急に来たもので焦る。
地下に下りると…暗いはずなのに、逆に明るい。何か白い光を放つものがここに存在するのだ…
これだ…この気だ…この気の正体は、一体何なのだ?
近付き、目を凝らして見る…と…それは1つの輪であった。ただ、びっしりと呪文が記された楕円形の輪。大の大人1人が余裕で通れるくらいの大きさだ。

芹雄:「これは…リンクゲート!?」

多治見:「その通り…やはり知っておるのですな?そうすると、貴殿は他の世界からやって来た冒険者…と言う事ですかな?」

芹雄:「そうか…さすがにあそこまで言っちゃうとばれてしまったか…」

多治見:「大丈夫です。別に他言はしませんし、何かに使おうという気もありません。ただ、そういう火とならば、『ここにリンクゲートがある』と言う事を教えても良いだろうと思ったまでです。」

芹雄:「そうですか…水鏡都市の他にもこんな所にリンクゲートが…あの、これは何と言う世界に通じてるんですか?」

多治見:「ここは、確か【アクエルド】という世界に繋がってますね。その世界の『サラダム』という地の『王都サランドン』という都市の寺院と繋がってる筈です。」

芹雄:「!? アクエルド…!!…そうか……別大陸の噂の少女…」

多治見:「ここは貴殿ならご自由に使って頂いても構いません。使いたい時は私に声をかけてください。」

芹雄:「わかりました…有難うございます…今日はここで失礼します。」

 地下から――そして寺院から出た。その後、適当にぶらついてから宿に帰った。
その日、頭の中はリンクゲートの事でいっぱいだった。

 次の日から、先日の事も考えつつ訓練所に向かい、仲間の様子を見に行く。これといって変わった様子もなく、適当に話をした。
5日目…ファンチーヌは明日に備えて休養をとってるらしく訓練所にいなかった。藍例・奈香と話をする。


 そして、剣闘会の開催日―――――
仲間の三人が宿にやって来た。今日は訓練所から休みを貰ったらしい。

藍玲:「芹さん、ついに大会の日がやって来たアルね。」

芹雄:「そうだな…さすがに当日になると気が引き締まる…」

奈香:「体調は万全ですか?」

芹雄:「あぁ。問題は無い。頗る好調だ。」

ファンチ-ヌ:「じゃぁ、準備はいいわね?芹雄…行きましょう。」

芹雄:「おう。」

 席から立ち上がり、マスターと女将に挨拶した後、宿を後にする。
そして闘技場前―――

芹雄:「よし。参加登録に行くか。」

 と、さも当然のような言い方をする芹雄。それを聞いた途端。

三人:「ええっ!?」

 三人が『ええっ!?』と言った。

奈香:「芹雄さん…参加登録されてなかったんですか?」

芹雄:「え? あぁ。まだだけど…」

藍玲:「参加登録締切って昨日じゃなかったアルか?」

ファンチ-ヌ:「私は前日に登録済ませたわよ?」

芹雄:「……………え?」

 一瞬血の気が引く芹雄。そこに呼び子の声が響いた。

呼び子:「さぁさぁ、今日はコロシアムの開催日だ!手に汗握る剣闘会の始まりだよ! 退屈しているお兄さん暇を持て余しているおばちゃんも皆で見においで!」

 ちょっとムカッとする芹雄。

呼び子:「ついでに飛び入りで参加してくれる命知らずも大募集だ!」

芹雄:「お!良かった…やっぱり飛び入り参加募集してたか。」

藍玲:「あはは。一安心アルね。」

ファンチ-ヌ:「私も、仲間が一緒に出てくれるとなると心強いわ。」

奈香:「ふふ…良かったですね?二人とも。」

芹雄:「あぁ…とにかく、登録してくるよ。」

藍玲:「あ、ワタシも着いて行くアル〜。」

奈香:「じゃぁ、私も…」

ファンチ-ヌ:「…一人で行動してもしょうがないし、私も行くわ。」

 結局全員で受付に行くことになった。

芹雄:「すいません。剣闘会に参加したいんですが。」

受付嬢:「はい。挑戦ですね?」

芹雄:「はい。…飛び入りでも大丈夫ですか?」

受付嬢:「はぁい!飛び入りは勿論大歓迎ですよ!」

芹雄:「じゃぁ、お願いします。」

受付嬢:「はい、承りました。では、称号とお名前の方、お伺いします。」

芹雄:「え…? 称号…?」

受付嬢:「はい。称号ですよ?『冒険者の』とか『○○の達人』とかです。」

芹雄:「……………」(しまった…忘れてた…無いことはないんだが…いいのかな?)

受付嬢:「……あの〜…?」

芹雄:「あ…すいません。称号は風と光の英雄。名は芹雄です。」

受付嬢:「はい、わかりました。『風と光の英雄』『芹雄』…さんですね。確かに登録しました!…それにしても勇気ありますねぇ…」」

芹雄:「ただの好奇心ですよ。」

受付嬢:「あ、そうだ。剣闘会のルールってご存知?説明した方がいいかしら…?」

芹雄:「え〜っと………お願いします。」

受付嬢:「一瞬間が開いてましたが…まぁいいか。えっと、要するに、コロシアム(闘技場)の真ん中で怪物相手に闘ってくれればいいんですけど。 あ、勿論一人で、ですよ?パーティ全員で……は反則ですからね。武器や魔法は何を使ってもいいですよ。回復薬も制限はありません。 ただ、剣闘会中はアイテム等の買足しは出来ないから注意してくださいね。救護班が待機していますので安心して闘ってください。一試合終る毎に怪我の治療はしてあげますよ。 あぁ、怪我の治療っていうのは体力と魔力の回復も行います。敵の怪物には相当強いのがいるから気を付けて下さい。 試合に勝つ毎に賞金が出て、全部に勝つと素敵な商品が出るから頑張ってくださいね!」

芹雄:「長い説明、有難う。そしてご苦労様です。」

受付嬢:「いえいえ。仕事ですから。」

芹雄:「参加するのは俺とファンチーヌだけだな?」

ファンチ-ヌ:「そうね。ここから2人とは別行動ね。」

奈香:「では、私達は観客席に行って、そこから応援しますね。」

藍玲:「ファン、頑張アル!応援してるアルよ!」

ファンチ-ヌ:「えぇ。有難う。私の持つ力…全てを出し尽くすわ。」

芹雄:「おい…俺の応援は…?」

藍玲:「芹さんは応援しなくても絶対に負けないからしなくても大丈夫アル。」

芹雄:「ひ…贔屓だ…」

奈香:「ふふふっ…さ、そろそろ行かないと良い席が取れなくなりますよ?」

藍玲:「じゃ〜ね〜!二人とも〜!」

 藍玲と奈香の二人は観客席に向かって行った。芹雄とファンチーヌは挑戦者控え室に向かう…その途中。

芹雄:「…ファンチーヌ。薬は持って来たのか?」

ファンチ-ヌ:「え? ええ。一応【強壮丸(体力回復の丸薬)】を2つ。」

芹雄:「…そうか。しかし、それはちょっと甘く見過ぎだな…まだ持てるか?」

ファンチ-ヌ:「え? まぁ、持てるけど…大丈夫でしょ?」

芹雄:「それが甘い考えなんだ。言っておくが、最後の相手は俺でも苦戦する。」

ファンチ-ヌ:「え…?芹雄でも…?」

芹雄:「そうだ。それが剣闘会のレベルなんだ。」

ファンチ-ヌ:「そうなんだ…ごめんなさい…まさかそこまでとは…」

芹雄:「それが普通だから気にするな。今回は特別に俺の持ってる回復薬をやるよ…まぁ1個しかもってないが。持っていきな。」

 そう言って、青い紙の袋に入った薬を渡す。

ファンチ-ヌ:「え…?いいの?芹雄の分は?」

芹雄:「いらん心配はするな。それとも俺の強さが信じられないのか?」

ファンチ-ヌ:「そんな事は無いわよ…じゃぁありがたく使わせてもらうわね。」

芹雄:「あぁ。頑張って勝ち進めよ。」

 ―――――そして剣闘会が始まった。

どうやら登録順に挑戦するようで、芹雄は最後の方らしい。ファンチーヌも最初の方ではなかった。
一回戦目の相手は河童(リザードマン)。それほど強い相手ではない。ただ、武装しているのと硬い鱗に覆われているので戦闘力は並の人間よりは強い。それが2匹同時に襲いかかってくる。
案外剣闘会をナメてかかる冒険者が多かったのか、そこでも苦戦する者がいるようだった。勝てても二回戦・三回戦で敗退するものが続出。中には一回戦で敗れる者もいた。
二回戦目は大入道(トロール)が3匹。一回戦に比べてかなりレベルが上がっている。只でさえ殆どの能力を上回っているのに1匹増えているのだ。並の冒険者ではたまったものじゃない。 ただ、動きはかなりトロいので上手く闘えれば勝機はある。
しかし、この状態は新米には辛いだろう。逃げ出す者もいた。闘い方を誤り、タコ殴りに合うものもいた。
そうそう、こう言う挑戦者が逃げた、挑戦者が危険な場合、モンスターはどういう風になるか説明しよう。ちなみに、仮想です。
挑戦者が居なくなったり挑戦者が倒れ、もう闘えない事を確認すると控えていた十数名の魔法使いが一斉に【不動の勾玉】を使用する。麻痺させて動けなくなった後、檻に閉じ込める…といった感じであろう。
三回戦…なんとミノタウロスが出てくる。討伐依頼にも指定される強力なモンスターだ。1匹で出てくるので、それほど脅威な感じはしないが、体力・攻撃・守備・敏捷…といった全てにおいて優れた能力を持っている。 バトルアクスでの攻撃を食らうと下手をすれば一撃で彼の世行きだろう。
殆どの者は二回戦で敗れていた。運良く勝ち進んでも三回戦で敗退。四回戦に行くものはまだ居なかった。
ミノタウロスに敗れ、酷い怪我を負い、担架で運ばれる挑戦者…それを見てファンチーヌは呟いた。

ファンチ-ヌ:「…これが…剣闘会なのね…」

芹雄:「あぁ。どうだ?ファンチーヌあれに勝つ自身はあるか?」

ファンチ-ヌ:「正直…判らないわね。でも、ミノタウロスは倒せるくらいにはなりたいわ。」

芹雄:「…そうか。まぁ、諦めずに立ち向かって行けば、きっと勝てるさ。」

ファンチ-ヌ:「…うん。そうね。」

 そして………いよいよファンチーヌの出番がやってきた。

受付嬢:「『女剣士』ファンチーヌさ〜ん、出番で〜す。登場口まで来てくださ〜い。」

ファンチ-ヌ:「じゃぁ…行くわ。」

芹雄:「あぁ。頑張れよ。ここから応援するからな。」

ファンチ-ヌ:(いよいよ…剣士の憧れの舞台、剣闘会に出るのね…)

 門をくぐり、闘技場の舞台へと出る…とその瞬間。

  『ワァァァァァァァァ!!』
物凄い歓声…あらゆる方向から聞こえる。しかも、それは自分に向けてのものだ。自然と物凄い緊張感が…そして思わず目を瞑ってしまう。

ファンチ-ヌ:(ひぃぃ…凄い緊張する……だ、駄目よ!こんな事じゃまともに戦えないわ!)

 意を決したように、目を見開き、中心まで進む。
すると、司会者がアナウンスを始めた。――――どうでもいい事なんだが、なんで拡声器がこの世界にあるんだろうか…

司会者:「さぁ、命知らずが繰り広げる剣闘会!お次の挑戦者は……『女戦士』のファンチーヌさんだァ!」

  『ワァァァァァァァァ!!』
再び大歓声が巻き起こる。

藍玲:「ファン〜ッ!頑張るアル〜ッ!!」

奈香:「ファンチーヌさ〜ん!頑張れーッ!」

 歓声の中で仲間のしっかりとした声援が聞こえる…

ファンチ-ヌ:(藍玲…奈香………有難う。)

 不思議と、落付いて来た。

司会者:「では、参りましょう!最初のモンスターは…やはりこいつらだァ!」

 ≪ガシャン…ザザザザッ…!≫『フシュルルルルルル…………』
向いていた先の鉄格子で閉じられた門が開き、緑色の生物が出て来た。この国では河童と呼ばれてるが、二足歩行するトカゲには変わらないようだ。。

司会者:「それでは勝負開始!」

河童AB:『キシャ―――――ッ!!』

ファンチ-ヌ:「!!」

 剣を構えながらファンチーヌに向かってくる河童。ファンチーヌも剣を抜きつつ間合いを詰める。

ファンチ-ヌ:「はぁッ!」

 ≪ヒュッ…!ザシッ!……ドッ…≫

河童A:「キシャ―――――ッ!?」

 僅かにファンチーヌが速さに勝り、河童の胸と片腕を切裂く。絶命には至らなかったが、放っておいて死ぬほどの傷だ。

河童B:「シャッ!!」
 ≪ヒュ…、カィンッ!ガッ!≫

ファンチ-ヌ:「はッ!…つッ!?」

 振られた剣を弾いたが、流し切れずに逆の手で胴を殴られた。しかし、強化された腹当が服の下に装備してあったので被害は少なかった。続くファンチーヌの攻撃。。

ファンチ-ヌ:「てやぁッ!」

 ≪バシュッ!…ドサ…≫
 気合の入った一撃が決まり、河童を倒した。もう一体、虫の息だった河童は…大量の血を流し、既に動かない…いや。もう死んでいた…

ファンチ-ヌ:「…………ふぅ。」

 決着がつき、溜息をつた所で、大歓声。そしてアナウンス。

司会者:「勝負あり!ファンチーヌさん勝利です!なかなかの好勝負でした。」

 待機していた救護班が出て来て、回復魔法をかける。そして、一緒にやって来た受付嬢が賞金を持って来た。

受付嬢:「おめでとう!これは一回戦勝ちぬき賞金の500Gよ。」

 賞金を受け取るファンチーヌ。救護班は完全に快復した所で引き下がっる。受付嬢も一緒に去って行った。いつの間にか河童の死体は消え去っていた。

司会者:「さぁ、次に参りましょう!今回、挑戦者を一番悩ませているこいつらが相手だ!」

 ≪ガシャン…ドシ…ドシ…ドシ…≫
褐色の巨人が3体出て来た。

司会者:「それでは、勝負開始!」

大入道A:「ガァァァァァァァァ!!」

 咆哮で威嚇。しかし、この程度の威嚇ではファンチーヌに効果はなかった。
≪タタタタタ………≫
 大入道に向かって走るファンチーヌ。しかし、完全には近付かず、手前で曲がったり、途中で止まって相手の動きを観察する。
 撹乱…こういう巨人系のモンスターは体力・筋力に優れているが、知力・敏捷が劣っている。
 あっという間にフォーメーションを崩されてしまった大入道たち。
 そこでファンチーヌは武器の射程を利用して、1体の大入道を壁にして陰から攻撃の届かない敵を攻撃する戦法に出た。

ファンチ-ヌ:「はッ!…せやッ!」
 ≪ザシュッ!ザシュッ!≫

 二回ほど攻撃した所で、その大入道の拳が振り上げられた。瞬間、他の大入道の陰に隠れる。仲間を殴るのは出来ないのか、そのまま拳を下ろした。そこをまた攻撃するのだが…
 ≪ドゴッ!≫

ファンチ-ヌ:「あグッ…!?」

 壁にしていた大入道がその間にか拳を振り上げており、ファンチーヌの胴を殴ったのである。しかし、またも防具に助けられ、被害は多少抑えられた。立ち直って再び攻撃開始。

ファンチ-ヌ:「はぁーッ!!」

 ≪ザクッ!≫

大入道B:「グォォ………」

 ≪ドサ…ァ…≫
 やっと1体倒す事が出来た。しかし、安心は出来ない。まだ2体居るのだ…
 もう一体も同じように隠れながら3回斬り付けて倒す。しかし、その間にも1度殴られている。
 そして、1対1の状況になった。かなり疲れているのか、ダメージが溜まってきたのか、表情が険しくなってきた。
 最後に残った大入道は、当然お構いなしにファンチーヌに向かって歩いてくる。
 道具袋から、薬を1つ取り出す。緑色の紙袋…強壮丸を飲む。そして、少し経つと体力が回復してきた。

ファンチ-ヌ:(よし……)

 ≪チャッ…≫

 剣を構え…大入道に突進する。

ファンチ-ヌ:「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!せいや――――ッ!!!」

 ≪ザシッ!ドシュゥ!≫

大入道C:「グォ…!?」

 2撃目に会心撃が出て、相手が一瞬怯む。この好機を逃す手は無い。

ファンチ-ヌ:「ヤァ―――ッ!!」

 ≪ゾムッ…ブシュッ!≫

大入道C:「グ…グォォォォォ!!!」

 ≪バキッ!…ドッ。≫

 胸を貫かれ、血を吹き出すが、最後の力を振り絞り、ファンチーヌの頭を殴った。星兜に当たり、その衝撃で頭から脱げ地面に落ちた。

≪……………ズルッ……ドズ……ン≫

 完全に事切れたようで、両腕が垂れた。剣を引き抜くと、その方向に倒れて来たのでさっと避ける。最後の大入道は砂埃を立てて地に臥した。
 小さくガッツポーズをとり、勝利した事をアピール。

  『ワァァァァァァァァ!!』
 大歓声。

司会者:「またもやりました!ファンチーヌさん、勝利です!凄い戦いを見せてくれました!いい戦いでしたね〜。」

 救護班が現れ、回復を始める。受付嬢は賞金(1000G)を渡す。
≪ガシャーン!…ガシャーン!…≫『モォ―――――ッ!!』
 鉄格子の向こう…暴れ牛でも居るのか、凄い騒ぎになっているようだ。
 回復が終り、救護班は戻ろうとし、死体を片付けていた魔術士も既に消えていた。

司会者:「では次にいきましょう次は…」

…言いかけた次の瞬間。
≪バギャァ! ドシン、ドシッ…≫『ヴモ"ォォォォ――――――ッ!!』

救護班:「ヒッ!?ひええぇぇぇ!!」

受付嬢:「キャァァァァァァ!!!」
 鉄格子が破られ、ミノタウロスが登場してきた。なんか既に出来上がってる様子。まだ舞台に残っていた救護班と受付嬢は慌てて帰って行った。

司会者:「お〜っと、これはハプニングだぁ〜!押えの効かなくなったミノタウロスがついに辛抱堪らず、鉄格子まで打ち破って登場してきた〜ッ!面倒臭くなくていいので、このまま闘ってもらいましょう!勝負開始っ!」

 どうやらこの司会者、面倒臭がりで血も涙も無いようだ。

≪ドドドドドドドドド!≫

 正確にファンチーヌを狙って走って来るミノタウロス。手にはバトルアクスが握られてる。
 ≪ザッ……≫
 なんとジャンプした。
走ってきた勢いと落下の勢いを乗せ、一気に斧を振り下ろして来た。
≪ドゴォッ!≫
 上から振り下ろされただけだったので、簡単に避ける事が出来た…斧は。
≪バゥッ!ビリビリビリ…≫
 風圧と、地面に叩き付けられた時に生じた衝撃が一気に襲いかかった。

ファンチ-ヌ:「くぅッ!…………たぁぁッ!」

 なんとか体勢を整え、斧を再び持ち上げようとしている牛の化物を左側から攻撃する。
≪ドッ…≫

ファンチ-ヌ:「…な!?」

 一応ダメージを与えたが、切裂く事は出来なかった…強靭な筋肉によって斬撃を止められたのだ。

ファンチ-ヌ:(こ…こんなのどうやって倒せと…)

 あまりの衝撃に怯んでしまった。そこに牛の怪物が再び攻撃を仕掛けてきた。今度は横払いだ。

ファンチ-ヌ:(しまっ…)「うぁぁッ!!」

≪ガギィ!……ドッ…ザザザ…≫

ファンチ-ヌ:「うッ…がはッ!えふッ、ゲホっ!…」

 なんとか武器で防御して直撃は免れたが、それでもダメージは相当なものだった。

ファンチ-ヌ:(駄目…こんなの…勝てない…どうしたら……教えて…芹雄!)

 ほと芹雄の励ましの言葉を思い出した。『諦めずに立ち向かって行けばきっと勝てる』。

ファンチ-ヌ:(そうよ…私はまだ負けていない…ここで諦めたら、芹雄にあわす顔が無いわ。)

 立ち上がるファンチーヌ。まだ負けていない、という意思を持つ目に怯む牛。そして、吹き飛ばされた事が幸いして、相手のとの間合いが離れた。これなら少し時間が稼げる。
道具袋から芹雄からもらった青い紙袋を取り出し、中の丸薬を口に含んで飲み込む。暫くすると体に生じていた痛みは引き始め、全く消え失せた。逆に状態が良くなった感じまでする。完全回復した。 芹雄がくれたこの薬は【全快丸】だったのだ。戦況は元に戻った…そして冷静に相手を観察しつつ間合いを詰めた。
暫く観察すると、牛が攻撃を受けた腕を振ったのが見えた。良く見ると出血もしている…なるほど、それなりに効いているという事だ。

ファンチ-ヌ:(これなら状況は私が有利……ならば……!)

 一気に間合いを詰めるファンチーヌ。そして、駆けながら相手を攻撃していった。何度も何度も相手を斬り付ける…という戦法だ。傷は深い物を付ける事は出来ないが、確実に蓄積している。
負けじとミノタウロスも斧を振るう。上手く受けてダメージを抑えた。
繰り返し、攻撃を開始する。しかし、その攻撃も限界が来た。動きまくる所為でかなり疲れる。一瞬、足がふらついた…その瞬間
≪ブォンッ!ガシッ…ドゴッ!≫

ファンチ-ヌ:「あっ…クッ、ウグッ…か…は、あっ……」

≪ドシャ…ズシャァ……≫
 その一瞬の隙を突いてミノタウロスが斧を振るった。剣で受け止めようとしたが、力及ばず剣ごと胴に直撃させられた。一気に瀕死に陥る。
そしてまた少し吹っ飛ばされる。牛も相当なダメージがあるのか、膝をついて苦しそうにしている。あと一息で倒せる…そう思った。
そして最後の薬を取り出し服用する。全ては最後の一撃の為に…

ファンチ-ヌ:「いくわよ……」

 その気を感じたのか、ミノタウロスも立ち上がり、斧を振り上げ、一撃にかける。

ミノ:『ヴモ"ォォォォ――――――ッ!!』

咆哮を上げ、気を溜め始める。それを合図に、ファンチーヌは駆け出す!

ファンチ-ヌ:「はぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ッ!!」

≪ゾブッ!ドガッ!≫

お互いの一撃が直撃する。ミノタウロスの胸には剣が突き刺さり、胴に斧を受けたファンチーヌは吹っ飛んだ。

ミノタウロスは前のめりに倒れて、そのまま動かなくなった。ファンチーヌは…

ファンチ-ヌ:「う…うぅ…っく…」

 なんとかよろめきながらも立ち上がる。そして…

司会者:「やりました!ファンチーヌさん、快挙です!辛勝ですが、今回初、三回戦突破です!……あ、あれ?」

 一瞬の歓声…しかし、すぐにざわめきに変わった…ファンチーヌが倒れているのだ。

 救護班が駆けつけたが、既に気を失っていた。これ以降の戦闘は続行不可能と判断。担架で医務室に運ばれた。

……………

ファンチ-ヌ:「う…うんん……?」

奈香:「あ!気が付きましたか!?」

藍玲:「はぁ…良かったアル…大丈夫アルか?」

ファンチ-ヌ:「あれ…藍玲に奈香…?………!? こ、ここは!?剣闘会は!?あ、痛ッ!………っつぅ…」

奈香:「あ、駄目です!ファンチーヌさん…寝ててください。」

ファンチ-ヌ:「私…あの試合、どうなったの?」

藍玲:「はい、2000G。三回戦制覇オメデト〜ッ!…でも、突破にはならなかったアルね…」

ファンチ-ヌ:「そう…でも、ありがとうね。わざわざ来てくれて。」

奈香:「いえ。仲間ですから当然のことですよ。」

ファンチ-ヌ:「そういえば芹雄の姿が見えないけど…」

藍玲:「あ…実は芹さん、ファンが目覚めるちょっと前に呼ばれて…」

ファンチ-ヌ:「え!?じゃぁ、芹雄…次試合なの!?」

奈香:「あ…はぁ、一応…」

ファンチ-ヌ:「こんな事しちゃいられないわ!早く見に行きましょう…い…痛たたた……」

奈香:「だ、駄目ですよ!しばらく安静にしてないと…」

ファンチ-ヌ:「お願い…あの人の戦いが見たいの…」

藍玲:「…はァ…仕方ないアルね。ほら!掴まるアル。」

ファンチ-ヌ:「ありがとう…藍玲…」

奈香:「…ン、もぅ!酷くなっても知りませんからね!」

 そう言って、もう片方の腕を担ぐ奈香。ファンチーヌは一言『ありがとう。』と言い、三人は観客席に向かった。

司会者:「さぁ、命知らずが繰り広げる剣闘会!いよいよ最後の挑戦者だァ!」

芹雄:(げ…俺が締め括りか…)

司会者:「最後の挑戦者はァ、なんと飛び入り参加の冒険者『風と光の英雄』芹雄さんだ!」

 歓声が巻き起こる。

その中に前回、くじ引きの時に芹雄の顔を知ってる奴がいた。

観客A:「あ!あいつ見たことあるぞ…確か…そうだ!くじ帝王だ!

観客B:「なんだって!?それホントか?なんだよ…また期待できそうに無い冒険者か…飛び入りにも困ったもんだなぁ…」

観客C:「おーい、くじ帝王〜っ!剣闘会は運で何とかなるイベントじゃねーぞー!?」

観客D:「怪我しない内に帰った方が良いぞ〜!」

 歓声が嘲笑に変わった。

司会者:「何とも頼もしい限りですが、果たして最後まで勝ち進めるのか!…いや、この一回戦を生き残れるのか!?」

  『どっ――――――!!』

大爆笑が巻き起こる。

藍玲:「むっか〜ッ!!こいつらホントムカツクアルね〜…!」

奈香:「無知というのは恐いですね…司会者にまで馬鹿にされて…芹雄さん、可愛そう…」

ファンチ-ヌ:「そうでもないみたいよ…」

奈香:「…えっ?」

ファンチ-ヌ:「芹雄の顔を見て…ほら、笑ってるでしょ?…嫌な笑い方だけど。何か仕出かすわよ。きっと。」

藍玲:「ん〜?あ…ホントあるね…『ニヤソ』って感じの笑みアル…キヒヒ…なんか面白くなってきたアル…」

司会者:「まずは肩慣らし程度に、このモンスターが相手だ!…試合開始!」

河童:『キシャァァァァァ!!』

 河童2匹が芹雄に一斉に飛び掛った。しかし芹雄は微動だにしない。武器すら抜いていない…しかし……
≪ブぎゅる!≫≪ギョぱっッ!≫

 突然1体の頭部が弾け、もう1体の体が縦に分断された……
≪シ――――――――…………………ン≫
突然の出来事に、しばらくその場が凍ったかのように静まり返った…
次に進まない…と思ったので、ガッツポーズを取って勝利をアピール。

司会者:「す………凄いぞ、芹雄さん!やりました、快勝です!いや、何が起こったのか私にはサッパリ判りませんでした!」

  『ワアァァァァァァァァァ!!』
大歓声。

――――どうなったのか?皆さんのご想像通り、芹雄の攻撃です。ただし、素手で。
観客を驚かせる為にやった事ですが、1体目に掌底を放つ。カウンターになった為、威力が上がり、結果、頭部が破壊されることに。これも狙ってやった事。
2体目…手刀で頭上から真っ二つに切り裂きました。既に神クラスの能力を持ってるんだから、こういう事が出来ます。
で、どちらも1撃で倒す。弱者と信じ切っていた観客も、まさかこんな結果になろうとは思いもしなかった観客も皆驚き、固まってしまう…といった感じ。
 救護班が出てきて、一応訊かれるが、丁重にお断りする。受付嬢から賞金を受け取る。

司会者:「さぁ、どんどん行ってみよう!二回戦目の相手をするのはこれだっ!…勝負開始!」

大入道:「グオオオォォォォォ!!」

芹雄:「刮目せよ!我は忍の達人なり!その身に刻め…我が白の刃!そして…主の刃!」

≪カァッ!ドドドシュ、ズバババ!………ドサ…ドズ…ドゥ…ン……≫

 大入道三匹…吼えてる間にカタが付いてしまった。

司会者:「お〜っと、これは意外だァ!なんと挑戦者は達人でした!これはこの程度で負けるはずが無い!」

 司会が喋ってる内に、救護班の治療を受け、受付嬢から賞金を貰う。次の準備も出来たようだ。

司会者:「さぁ、どんどんまいりましょう…次の相手はこいつだぁ!…勝負開始!」

ミノ:『ヴモ"ォォォォ――――――ッ!!』

≪ズシャ!≫

ミノ:『ヴモ"ッ!?』

≪ザンッ!≫

ミノ:『ヴモ"ォォッ!?』

 吼えてる間に1度斬られ、怯んだ時に更に斬られた。堪らない、と感じたのか負けじと斧を振るう…が…

≪ブンッ!…ピッ…≫

掠っただけだった。簡単に避けられた。

≪ドシュ!バシュ!≫

ミノ:『ンモォォォォ………』

≪ズゥゥ…ン≫

司会者:「なんということでしょうか!あの今回最高記録のファンチーヌさんでさえ相打ちになったミノタウロスをいとも簡単に倒してしまいました!凄い挑戦者だ!」

 同じように治療を受け、賞金2000Gを貰う。

司会者:「いよいよ残すところ後僅かだ!ここまで勝ち残れた者は、なかなかいません!そしてこの強者、芹雄さんの相手をするのはこれだッ!」

≪ズン…ズン…ズン…≫

金色に輝く金属のボディを持った巨大な人形…アイアンゴーレム。それが2体出てきた。ミノタウロスに比べ、能力的はそれほど強くないんだが、とにかく硬い。物凄い忍耐力を持つ怪物なのである。
しかも、魔力で操られているからか、それほど動きが遅いわけでもない。しかし、放つ攻撃に威力は篭ってないので、一撃はそれほど怖いものではない…問題は何度耐えられるかだ。
前述の通り、凄まじい耐久弩を持っている…それほど遅い訳でもない…即ち、倒すまでに何度も攻撃を食らってしまうのだ。恐らく、ファンチーヌでも1体も倒せないだろう。それほど硬いのである。
≪ガイン!ガイン!≫
硬いと知っているが、それでも直接攻撃を仕掛ける芹雄。さすがに威力がデカイだけあって、大きな傷を付けている。
≪ブンッ!ゴツッ!ガツッ!≫

芹雄:「痛っ…ぃてッ!やりやがったな、こん畜生が!」

 2体からそれぞれ1撃ずつ頭突きを食らう。それほどダメージは無かった。再度、素早い動きで攻撃する芹雄。

≪ガイン!ガシィ!……ガーン、ガシン、ガッ、ゴン、ガラガラ…≫

四発殴って、1体破壊した。
≪ガイン!…ブンッ!ゴッ!≫

芹雄:「ッ…かぁ〜ッ!いってぇ〜っ!」

 攻撃中、またも頭突きを食らう。やはりそれほどのダメージは受けない。

≪ガシッ!ガン!…ガラン…ゴン、ゴッ、ゴオン……≫
2体目も破壊した。買った芹雄は頭突きを食らった部分を摩りながら、

芹雄:「ふぅ…やれやれ…」

 と、ジジィのように呟いたそうな…

司会者:「おおっと!ついに四回戦まで突破しました!なんという挑戦者だ!果たしてこの人は人間なのでしょうか!?」

芹雄:(失礼な…まぁ…否定はせんが。)

 救護班と受付嬢がやって来た。治療を受けつつ、賞金3000Gを受け取る。

受付嬢:「後一回勝てば試合制覇よ!頑張って!」

 何故か応援される。
全員が去った後、いよいよ最後の挑戦が始まる。鉄格子の所には何もなく、正面の大きな鉄の扉のところから音が聞こえる。

司会者;「ついに…ついに最後の挑戦です!これは凄い、ここまで勝ち進んだ者は過去を通してもごく僅かしかいません!そう…まさに稀代の勇者芹雄さんが挑む、まさに最後の怪物はこれだ!」

≪バァーン!ドゴーン!≫

 巨大な鉄の扉が勢い良く開かれる!勢いのついた鉄の扉はそのまま回転し、壁に激突した。扉の中から…巨大な竜が…いや、前足の無い翼のが大きい…翼竜・飛竜の代表格ワイバーンが現れた!

ワイバーン:「グワアアァァァァァァ!!!」

芹雄:「ふふ…待っていたぞ…この時を!俺はこいつと戦う為にこの試合に出たんだからな…!」

 ワイバーンは普通のダンジョンでは登場せず剣闘会でしか会えないのである。

芹雄:「ドラゴンスレイヤーの血が騒ぐ………オオォォォォォッ!」

≪タタタタタ…タンッ!シャッ!ガシィ!シュッ…ザシュッ!ブンッ!ガッ!ドスッ、ドスッ!グワッ!ドゴッ!ジャッ…タッ、シュッ!ザン!クルッ、ドシュッ!……≫

 目にも止まらぬ戦闘が展開されていた。素早い動きでいきなり翼竜の頭上まで飛び上がり、剣を付き立てようとしたが、上手くかわされ、少し鱗を削いだだけになる。しかし、連続斬りが決まる。 そこで反撃に出た翼竜は首を使っての頭突き。これを芹雄は剣を使って受け、その反動を使って首に剣を二度突刺した。首を振り、芹雄を払い落とすと噛付きにくる翼竜。 噛付きは免れたが、頭は避け切れず、頭突きを食らうという結果になった。しかし、すぐに体勢を立て直し、飛び上がって、頭に斬撃を食らわせ、身を回転させ、更に1撃加えた。

芹雄:「はぁ…はぁ…さすがは竜族…大した強さだ…だが、まだ行ける…」

ワイバーン:「グワァッ!」

芹雄:(ッ! 噛付きか!……!?何ッ!?)

≪ブォン!ガシィッ!……ドガッ!≫

芹雄:「ウッ!ゲハッ、ガハッ!…ち…やるじゃないか…ここは回復しないと…恩恵札!」

 翼竜は噛付くと見せかけて、尻尾で攻撃してきた。見事に策に引っ掛かってしまった芹雄は防御できずにモロに食らってしまい、結果、壁まで吹っ飛ばされた。
恩恵札を使い、体力を回復させる…さすがに全快とまではいかなかったものの、体を動かすには何ら支障の無いほどまで回復した。

芹雄:「…っしゃ!行くぞ!第2ラウンドだ!」

≪タタタタタ…スッ…ザシッ!グオッ!バキィ、ズン!ザッ、バシュッ、バシュッ!ブゥン!ガツッ!ジャッ、タンッ……≫

 翼竜の下を走り抜け、足を斬る。その足で蹴ってくる翼竜。それも意外だったので思いっきり食らう。しかし、すぐに立ち直り、再び二回斬る。今度は尻尾で攻撃してきた。 これは予想がついたので剣で防御。衝撃で少し飛ばされるが、上手い位置に降り立ち、方向を変えてジャンプ…狙うは翼竜の眉間…翼竜は体を捻って避けようとするが、足に力が入らない。
そのまま……

≪ドシュ………≫

ワイバーン:「グワァァァァァァァァァァァァ!!!」

≪ドズ――――――ン……ズシ――ン………≫

 最後の咆哮を上げ、ワイバーンは倒れた。

芹雄:「はぁっ……はぁっ……」

 ≪しん………………≫
一瞬の沈黙……そして……

  『ワァァァァァァァァァァァ!!!』

大歓声。そしてファンファーレ。

司会者:「なんと芹雄さん、最後の強敵をも打ち倒しました!これは凄いぞ!皆さん盛大な拍手を……って、やってますね。」

 

 

 その後、閉会式が行われた。ファンチーヌも一緒に舞台にいる。

司会者:「芹雄さんには、剣闘会全試合制覇という栄誉を称え、賞品として【栄光の剣】、そして賞金5000Gが贈られます!皆さん、再度の盛大な拍手を!」

  『ワァァァァァァァァァァァ!!!』
一斉に拍手と歓声が巻き起こる。

司会者:「これで今回の剣闘会は終了です!皆さん楽しんでいただけましたか?闘ってくれた勇士達に再度の拍手をお願いします!」

≪バァ――――――ッ!!≫

司会者:「有難う御座いました!」


 闘技場の前にて…………

藍玲:「はぁ〜…凄かったアルね〜…あれが超人と強大モンスターとの戦いアルか…」

奈香:「今思い出してもゾクゾク、ワクワクしますね。」

 藍玲と奈香は先程の試合のことを楽しそうに話し合っている。少し離れて、芹雄とファンチーヌ…

芹雄:「身体は大丈夫か?訓練所まで送っていこうか?」

ファンチ-ヌ:「ううん…大丈夫よ。かなり楽になったから。」

芹雄:「そうか?ま、取り敢えず明日は休ませてもらった方がいい。無理はするなよ?」

ファンチ-ヌ:「えぇ。ありがとう。」

奈香:「あ…っと、そろそろ訓練所の門限に間に合わなくなりますね…」

藍玲:「うわ、やばいアル〜っ、あの師範怒るとメチャクチャ恐いアルよ〜…」

芹雄:「ん…そうか。じゃぁ今日はここで解散だな。みんな気を付けて戻れよ!」

ファンチ-ヌ:「えぇ。芹雄もね!」

 仲間とそこで別れ、芹雄は一人宿に帰って行った。
宿で待っていたもの…マスターと女将だった。今日の試合について色々質問される。
疲れていたが、美味い料理が食えたし二人が喜んでくれてたのでそれなりに良い一時が過ごせた。

 部屋に戻り、装備を外して布団に倒れこむ。やはり相当疲れていたのか、すぐに眠りに落ちた。


 次回、なんと急展開!あの寺に置いてあった装置を使って別世界に旅立つ芹雄!
その先に待つものは一体…?期待して待て!
でも…『大陸一周・美食巡りの旅』はどこにいったの?
…………さぁ?


第十八章

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