ルナティックドーン 前途への道標
〜剣士【芹雄】の冒険記〜

〜 第十九章 〜

異世界



 剣闘会も終わり、再び暇な日常が戻って来た…
しかし、その何もせずに過ごす毎日…芹雄の頭の中は「リンクゲート」で一杯だった。
 そんな中、三人が宿屋に戻って来た。修行期間が終ったのだろう。

藍玲:「やっほ〜!芹さん、久し振り!」

芹雄:「あぁ…藍玲か。」

奈香:「…?どうしたんですか、芹雄さん…元気がないようですが。」

芹雄:「ん?…いや、何でもないよ。久しぶりだな。みんな。」

ファンチ-ヌ:「そんなに久し振り…というわけじゃないでしょ?どうしたの?悩み事?」

芹雄:「…まぁ…そんなところ。ま、大した事じゃないし気にするなよ。」

 元気良く笑って見せる。

奈香:「なら…いいんですけど。じゃぁ、今後の事を相談しましょう。」

藍玲:「そろそろ、他の町に行きたい気もするアル…」

芹雄:「まぁ…そうだろうなぁ…」

ファンチ-ヌ:「…私は…悪いんだけど、まだ訓練したいわ…」

芹雄:「…やっぱそうだよなぁ…………え!?」

 『マジで?』といった顔をファンチーヌに向ける。

奈香:「ファンチーヌさん…やっぱり、納得いきませんか。」

ファンチ-ヌ:「うん…ごめんね。」

藍玲:「わかったアル!ファンの気が済むまでワタシたち、付き合うアルよ!いいよネ?芹雄、奈香。」

奈香:「ええ、勿論です。私もまだ訓練し足りない気もありましたし。芹雄さんは?」

芹雄:「……えっ?……あぁ、勿論構わないよ。丁度良かったし……あ…」

ファンチ-ヌ:「『丁度…良かった』……?それってどういう事?」

芹雄:「え…?あ、い…いや…」

藍玲:「さっきの態度はそれが原因アルね!?さぁ…吐くヨロシ!」

奈香:「芹雄さん…別に怒りませんから…訳を聞かせてください。さぁ。さぁ!

 そう言う奈香。一度にっこり笑ったかと思ったら、いきなり『くわっ!』と表情を変えて怒鳴った。
少し悩んだが、隠してても仕方ないのでいう事にした。ただし、多少嘘を含むが…

芹雄:「実はな…剣闘会の前にちょっと情報屋に行って探してたものの情報があったんだ。それを探しに行こうと思ってな。」

藍玲:「なんだ。それなら一緒に行くアルよ。」

芹雄:「いや…ありがたいんだが、これは一人で探したいんだ。みんなは訓練に集中て欲しい。」

奈香:「…そうですか。判りました…では、いつ戻られるんですか?」

芹雄:「わからない…1ヶ月以上かかるかもしれない。」

ファンチ-ヌ:「そんなに……? 重要な事なのよね?」

芹雄:「あ、あぁ…でも心配するな。出来るだけ早く戻ってくるから……」

藍玲:「うい!了解アル。じゃ、また訓練に行ってくるアル〜。」

奈香:「じゃぁ、私も行きますね…芹雄さん。それではまた…」

ファンチ-ヌ:「芹雄……」

芹雄:「大丈夫だって!そんな心配するな。出来るだけ早く戻るって言っただろ?そんなに気にしてたら集中できないぞ?」

ファンチ-ヌ:「うん……ごめんなさい…」

芹雄:「そら!元気出せって!更に強くなったファンチーヌを見せてくれよ?」

ファンチ-ヌ:「…うん、任せて! じゃ、私行くわね。」

芹雄:「ああ。」

 そして仲間の三人が訓練所へと向かった。芹雄は三人の背中に向かって呟いた……

芹雄:「みんな、すまない…」

 と……


 ――――東方都市の古ぼけた寺院。旅の準備を整えた芹雄はここを訪れた。そして住職に会う。

芹雄:「………多治見さん、いまから行けるか?」

多治見:「はい。大丈夫ですよ…ではこちらに…」

 そして、前に連れられた地下に案内される。そしてリンクゲートの前まで来た。

多治見:「…では、準備はよろしいですな? お気を付けて。」

芹雄:「ああ。戻って来た時もよろしく…」

 そしてゲートの中に入る芹雄…青白い光に覆われる…、そして何も見えなくなる!
≪ギュアァ………ンッ!≫
より一層強い光に包まれる……


 しばらく進むと光と闇の逆になったトンネルを抜けるかのように、先に闇が見えて来た…出口のようだ。

そしてその先に…別世界『アクエルド』に辿り着いた。

芹雄:(よし、着いた。…?やけに暗いな…ん?階段か…ここも地下というわけか。)

 先に階段を見つけ、上に上がっていく。黄金兜のおかげで、何も見えない事も無い。しかし、反応するという事は、辺りが暗いという事だ。
階段を上り切った先、行き止まりになっていた…と思ったら、取っ手がある。扉のようだ。

芹雄:「…さて、行くか!」

 ≪ガチャ…ギィィ……≫
軋み音と共に扉が開く。その先をの風景見た芹雄は…

芹雄:「なッ……!?」

 絶句。それもそうだろう。一王国の王都に来た筈なのに目の前に広がる光景は、壊れた建物だらけで人の気配が全くしない廃墟と化した街なのだから。

芹雄:「な…なんだ、これは…?壊滅状態じゃないか…一体何が………!?」

 次の瞬間、只ならぬ気配感じた。

芹雄:(凄いプレッシャーだ!いや、しかし…前にも二度、同じような力を感じた事がある…ま、まさか…)

 前…とは。前の世界『バイラーダス』に来る前の世界『ラフォーヌ』…芹雄からいえば第1世界であろうか。そこで二度、このような純粋に強い力を感じた事がある。
力の歪が産み出した狂暴な怪物…各地方の首都に現れては破壊の限りを尽くし、倒されるまで消える事の無い存在… しかも倒しても、死に絶える事は無く、数十年後に力を蓄えて何度も現れるのである…一般にこう呼ばれる。『地方最強モンスター』あるいは…

芹雄「『伝説の四竜』か…」

芹雄は、『ラフォーヌ』で2体の地方最強モンスターと戦った。その時に感じた気配がこの新世界に来ていきなり感じるのである…なんという偶然…と思った。

芹雄:「この建物の感じからすると…現れた最強モンスターは『デスドラゴン』だな…これは初めてだ…」

 一度戦ってみたいとは思っていたが、『この世界にはこの世界の英雄がいる…それは俺じゃない…あの少女だ。』と、頭の中に叩き込み、退治は諦める事にする。

 

 この世界の情報を聞こうと、街の中を歩く…しかし、街中の建物は殆ど壊滅、頼りの宿や情報屋は店員が居ない店ばかりで全滅であった。おまけに街の人間どころか小動物すら一度も出くわさない。

芹雄:(参ったな…宿も情報屋も利用できない…外に出ようにも馬車を借りる事も出来ない…どうしたものか…帰るか?)

 と、街の中央広場(であったであろう)の場所にあった瓦礫に腰をかけながらしばらく考えていると…遠めに、数人の人間…格好からして冒険者か?が、走ってくるのが見えた。 よく見るとそのうち2人が各々人を背負っている。
何故か咄嗟に瓦礫の裏に姿を隠す芹雄。何故か指名手配されてる気分。
見つかる事無く…というか、1つの事に集中してて他の事には全く無関心…といった感じか、さっさと通り過ぎていった。

芹雄:(ふぅ、やれやれ…………じゃなくて!追っ掛けて、話聞かないと!この世界で何も出来ねーっ!)

 数人の冒険者はある邸が立っていたであろう、やけに規模のデカイ敷地に入っていった。辛うじて残ってはいるが建物は半壊だ…修復もきかない状態だな…と暢気に考えて…
…る場合じゃない!、とさっきの冒険者たちを探す……と、地下シェルターか?そのような感じの施設があるらしく、一区切りの地面(蓋)を開けて入っていった。

芹雄:(へぇ…なるほど。考えたな。地下シェルターの避難場所か。これなら地方最強モンスターといえど、攻められないな。)

 などと感心しつつも、そろそろ…とその蓋に近付いていく。そして、音を立てないようにそっと開けて中に潜り込む。

芹雄:(なんか…すげぇ悪い事してる気がするんだが…まぁいいや。)

 階段を降り切った。既に先程の冒険者達の姿は見えなかった。辺りを見渡す…地下にしては明るい。それに地上に比べて生の力を感じる…
どうやら地上の街の住人のほぼ全てが今この中で生活していると考えられる…ならば。と考え、酒場か情報屋を探す事にした。
何度か人とすれ違ったが、あまり冒険者は珍しくないんだろう、特に意識されなかった…それと気づいた事がある。やはりこの世界も前の世界と言葉や風習などが一緒だという事。 これに関しては、一度経験してるし、不都合な事は何も無いので安心できるというもの。異世界の人間というのもバレずに済むかもしれない。
そんな事を考えながら、酒場と情報屋を探す。取り敢えず、目的の『噂の少女』を探す旅をするんだから、酒場を当たるのは当然だろう。仲間の一人や二人は欲しいし(若い女限定で)
あとは、やはり人探しなら情報屋だろう。都合よく彼女は冒険者だ。死んで無い限り確実に見つかる。まぁ、その後見つけるまでに移動されるかもしれないが。

 まず、情報屋が見つかった。仮設のものだが。地下施設の一室を借りて営業してるようだ。
クセなのかどうかは判らないが、いきなり全ての地方の手形を購入。この国の手形も勿論。それでいきなり怪しまれる。
この世界について、色々訊きまくる。その時点で、疑われて当然だろう…情報屋が言った。

情報屋:「ニィちゃん…あんた一体どこの人?………つーか、冒険者名簿にも名前が記されてないんだけど?」

芹雄:(ギク)「え!?いや〜、別に何処でもいいじゃないか!…ちょっと事情があってね…死んだ事になってるんだよ…」

情報屋:「んあ?…じゃぁ、闇ギルドの関係者か…にしては、情報屋を頼るとは珍しいな…しかもこの世界の事を何も知らないって感じもするし…」

芹雄:(ギクギク)「いや〜、俺ちょっと頭が病気でさぁ!変な生物の毒に冒されてるのか、物忘れが激しいんだよね〜。最近世界の事忘れちゃって困ってたんだよ!」

 言った後で「何言ってるんだろう…俺。」とか思ったりする。

情報屋;「そうか…苦労してるんだな…」

 何故か通じる。意外と情に厚い情報屋のアニキ(モヒカンではない)。
取り敢えず、この情報屋のお陰でこの世界について色々訊く事が出来た。
で、目的の事を聞く。

情報屋:「レナスさんかい?レナスさんなら『サラダム地方』の『王都サランドン』に居るよ。」

この街の事やないかい!すぐに会える事が判明した。

 次は酒場を探す…これは情報屋をでてすぐに見つかる。冒険者の便利を考えたのか、上手い位置設定だ。宿もちゃんと設けてあった。
酒場の中に入る。数人の冒険者がいるようだ。一通り見て回る…。『噂の少女』…はもう面倒臭いので『レナス』にして…ここには居ないようだ。
しかし芹雄的許容範囲の合格者3人見つかる。まぁ…ちょっとしか居る予定は無いが、その間のお相手くらいは欲しい。と、言う事で。

 仲間に誘う事にした。一人目、『女魔術師』クレア…洋魔法使い風の若い女性だ。斡旋所の前で仕事を探しているようだ。

芹雄:「あの…ちょっといいですか?」

クレア:「? …何か?」

芹雄:「えっと、今お一人ですか?」

クレア:「そうだけど…何?」

芹雄:「よければ、俺とパーティーを組んでもらえませんか?」

クレア:「あぁ、それで…ごめんね。折角だけど…」

芹雄:「そうですか…」

クレア:「あ、でも気にしないで。私は一人が好きなの。だから、誰かと一緒に…っていうことは出来ない、というだけだから。」

芹雄:「はい。どうも失礼しました。」

 一人目は失敗に終る。まぁ、世の中一人旅が好きな人もいるからな。気を切り替えて、2人目にうつる。
2人目は『闘争の』麗香(レイシャン)…中華風戦士の娘。先程依頼を終えたのか、斡旋所から戻って来て、席に着いてお茶を注文していた。

芹雄:「今、お話いいですか?」

麗香:「え? あ、はい。なんでしょう。」

 外見では判断できなかったがいい人そうだ。これならいけるか?と思う芹雄。

芹雄:「今後空いてたら、俺とパーティを組み―――」

麗香:「ごめんなさい。」

 言い切る前に即答された。

芹雄:「―――ま…せん、ね。スイマセンでした。」

麗香:「あ、いえいえ。暇だったらお願いしようと思ったんですけど、今依頼を申込んだところなんですよ…ゴメンナサイ…」

芹雄:「あぁ、いえいえ。こちらこそ。そちらの都合を考えずに誘ってしまって、申し訳ない…では失礼します。」

麗香:「はい。それでは」

 今度はタイミングが悪かった。仕方無い。次。
次は…『疾風の黒き刃』百恵…まぁ、見た目で言うなら若いくノ一。芹雄からすれば一番仲間になりにくいタイプである。

芹雄:「すいません。ちょっといいですか?」

百恵:「何か?」

 既に警戒しているのがミエミエ。『もう終ってるな…』そう思う芹雄だが、もう話してしまったし一応訊く事にした。

芹雄:「あの…俺とパーティを組んでもらえませんか?」

百恵:「あ〜…すいません…今から他の仲間と落ち合う約束してるんで、今空いてないんですよ…」

 意外な返答が返ってきたので、ちょっと動揺する。

芹雄:「え?…あ、いやいや!全然構わないですよ!うん、約束があるなら仕方ないですよね。」

百恵:「ごめんなさいね。それじゃ。」

 結局、全滅だった。

芹雄:「まぁ…今に始まった事じゃないしな…気にしない事にしよう…グスン。」

 で、仲間勧誘は終了。レナス探しをはじめる。まずは酒場のマスターに訊く。

芹雄:「マスター、ちょっと訊きたい事があるんだが。」

マスター:「ん?なんだい?」

芹雄:「今、この街にレナスと言う娘が居るって聞いたんだが、どこにいるか知ってるか?」

マスター:「レナス…?……あんた、あいつに何か用があるのかい?」

芹雄:「え…? いや、有名人だしどんな人か見てみたいなと思っただけだが。」

マスター:「……そうか。ならばいい。レナスはこのフェンリルの地下施設の訓練所で訓練をしている筈だ。」

芹雄:「そうか。有難う。あたってみるよ。」

マスター:「あぁ…でも、あいつにはここの全住民から期待が掛かってる。ちょっかいは出すなよ。」

芹雄:「ああ。それは重々承知だ。じゃぁなマスター、また来るよ。」

 そして、酒場を後にした。マスターに言われた通り、訓練所へ向かう――――
――――が。

師範:「レナス?今日は来てないが?何か用かね?」

芹雄:「あぁ、いえ。大した用じゃないんですよ。すいません、失礼しました…」

 レナス不在。また振り出しに戻った。

芹雄:(ふぅむ…どうしたものか…)

 で、考えた末…結局酒場まで戻って来てしまった。

マスター:「…あれ?…なんだ、えらく早いお戻りだな。…レナスは見つからなかったか。」

芹雄:「ああ。今日は来てないらしい…参ったなぁ。」

 カウンターの席に着いてそう言い、頭を抱える芹雄。

マスター:「まぁ、ヤツが倒されるまではレナスはこの街にいるんだ。気長に待つ事だな。」

芹雄:「いや…まぁ、そうなんだろうけどさ…」

マスター:「ま、取り敢えず今日の所は諦めて、仕事に戻ったらどうだ?」

芹雄:「……は? 仕事? 俺何も引き受けてないぞ?」

マスター:「あ"ぁ"〜!?何言ってやがる!この非常時、何もしないでボケーっと過ごすつもりかお前!?」

芹雄:「え? いや、別にそんなつもりで言った訳では…」

マスター:「食事も寝る場所も支給されてるんだから、その分ちゃんと働いて来い!」

 そう言われ、酒場を追い出されてしまった。訳が判らない…何なんだ?
丁度良い所に、クレアさんが前を歩いていた。取り敢えず、その『仕事』について訊いて見る事にした。

芹雄:「クレアさん!丁度良い所に…」

クレア:「え?…あら?さっきの…また何か御用?仲間のお誘いなら…」

芹雄:「いやいやいや…違うんですよ。ちょっと解らない事があって…ここで会話できる人は、全く居ないもんだから… 一度話したことあるし、クレアさんに相談しようかなと…」

クレア:「う〜ん…一回お話しただけでそんな信用してもらっても……ん〜、でもまぁ、いいですよ。今は空いてますし。それで…何ですか?」

芹雄:「いや、大した事じゃ無いんですがね…さっき酒場のマスターに『仕事して来い!』って怒鳴られて追い出されたんですよ…」

クレア:「うんうん…それで?」

芹雄:「……それだけですが。」

クレア:「……………」

芹雄:「……………?」

クレア:「…ぷっ、あははっ!あははははっ…!そ、そりゃぁ何もしないでサボってたら誰だって怒るわよ。 そんな、さも当然みたいに『何で?』って顔しないでよ!あははははは……!」

芹雄:「あぁ、スイマセン…ッていうか…いや…ホントに…」

 困った顔で慌てふためき、オロオロする芹雄…その状態を見てさらに笑うクレアさん。
周りから色んな人から色んな意味を持つ目で見られた…………それからちょっとしてようやく笑いが収まったクレアさんが話し出した。

クレア:「…っあ〜っ!久し振りに大笑いしたわ…ぷふっ…ふぅ。あなたって面白い人ね〜。」

芹雄:「嬉しくないですよ。」

クレア:「あら?誉めてるのに…あなたのような魅力ある人だったら一緒に旅しても面白いかもね?」

芹雄:「えっ…?」

クレア:「ふふっ…本気にしないで。冗談だから……で?その『仕事』…だっけ?」

芹雄:「えっ?あ、え〜と…そうそう。『仕事』って何かな?」

クレア:「あのね、今この街はあの怪物の所為で壊滅状態にあるわ。それは判るでしょ?」

芹雄:「えぇ…」

クレア:「それで、今は街の住民全員と、滞在していた冒険者全員でデスドラゴンが眠りにつくまで協力し合い、助け合う活動をしてるのよ。」

芹雄:「なるほど。だから、食料と寝床を支給してくれる町民の為に、我々冒険者は住民の為に出来る事をする…と。」

クレア:「そういうことよ。…装備からしてあなたは戦士の様だから、外で見張りかな?」

芹雄:「見張り?デスドラゴンが来たら知らせる?」

クレア:「まぁ…それもあるけど。ソレの襲撃でこの街の外壁が崩れちゃったじゃない?そこから入ってくるモンスターの退治も含まれるわね。」

芹雄:「ふむ…そうですか。わかりました。有難うございます。」

クレア:「え?…あぁ。うん。どう致しまして…」

芹雄:「じゃ、早速行きます。本当に有難う。では。」

 そう言って、芹雄は出口に向かっていった。その場に残ったクレア。

クレア:(モンスターが入ってきた時は他の冒険者に知らせるように…って言うの忘れちゃった… 何も聞き返さないんだもん…あ、そう言えば彼の名前も聞いてなかったわね…一方的に知られてるだけで。)

 そう心の中で呟き、更に

クレア:(あなたなら…今度誘ってくれれば、本当に仲間になるわよ?)

 とも呟いた。


 ――――王都サランドン―――――
芹雄はボランティア活動として、この街の見張り兼警護にあたっていた…といっても、見張りなんてそっちのけで、街の中に入って来たモンスターを倒しまくっていた。 火事場泥棒も居たようなので、ついでに始末しておく。結果的に、街の安全は守られている。見張りは他の冒険者に任せっきり。

ずっとそんな事をやってたらいつの間にか夜になっていた。そろそろ、戻ってもいいかな?と考える。
丁度、地下から出てきた冒険者(男)が居たので『交代な。』の一言で済まし、さっさと地下に下りる。
で、酒場に戻って来た。マスターもさすがにもう怒ってないようだ…それどころか、こちらを見つけると笑みを浮かべて話し掛けてきた。

マスター:「よう!戻ってきたな…聞いたぞ〜?街を徘徊してたモンスターや泥棒を退治したんだってな?」

芹雄:「え!?な…なんでそんな事マスターが知ってるのさ?」

マスター:「ふっふっふ…俺の…酒場のマスター情報収集力を甘く見たらいかんぜよ。」

芹雄:「いや、つーかそれくらい他の冒険者もやってる事だろ?そんな持ち上げる話でもないだろ?」

マスター:「ん〜…ところがそうじゃないんだよなぁ〜?」

芹雄:「え?」

マスター:「いつも皆チームを組んでやってるんだ。そのチーム同士の情報交換でも判らないことがあるんだ。」

芹雄:「な…何?」

マスター:「モンスターの集団突然死。」

芹雄:「……………」

マスター:「強力なモンスターと戦ってるあんたを見かけたチームがあってな。まぁ、1回だけだったが。そいつらの情報ではこうだ…」

 要するに…誰ともチームを組んでない一人の冒険者が、街中を徘徊するモンスターを次々と倒してくれている…と。調子に乗りすぎたようだ。

芹雄:「……まだまだ修行が足らんのか…」

マスター:「まぁまぁ!お前さんは今のところ、この街の英雄候補だぜ!まぁ、すぐにレナスに取られるだろうがな。まぁ、今は今だ!奢ってやるから飲め飲め!」

芹雄:「奢るってアンタ、支給品でしょうが!」

 と、何度が飲まされかけるが、なんとか断る事が出来た。
そろそろ、寝ようかと酒場を出、宿へ向かう途中、
≪ドッ!≫

???:「きゃっ!?」

 角を曲がった所で女性とぶつかった。

芹雄:「!? おッ…と。すいません、大丈夫ですか?」

 ぶつかった拍子に倒れそうになった相手を咄嗟に抱えてしまう。すぐに放したが。

???:「あ、はい。大丈夫です…申し訳ありません、私の不注意で…」

芹雄:「いえ、こちらも少し呆けていたので…」

 何か…凄い魅力を感じる若い女性だった。どう見ても十代後半あたりなんだが、凄く大人びていて母性を感じる…

???:「あの…?」

芹雄:「……え……っ?…あ、あぁ!スイマセン!また呆けてしまっていたようですね。すいません、どうぞ…」

 スッと身を引き道を開ける芹雄。本当に呆けていたようだ。

???:「くす…はい、有難うございます。では…失礼しますね。」

 にっこり笑って御辞儀をし、その場を去ろうとした。
芹雄はそのまま通すつもりだったのだが、思わず声をかけてしまった。

芹雄:「あ、あの!失礼ですが、御名前をお伺いしてよろしいでしょうか!? あ、俺は芹雄って言います!」

 何故か憧れの人に話し掛けるみたいにドギマギしてしまう芹雄。

???:「え…?私ですか?」

芹雄:「はい!」

愛蓮:「あ、はい。私、『心眼の』愛蓮(アイレン)と申します。」

芹雄:「あ、あの…ついでにお聞きしたいんですが…」

愛蓮:「はい?何でしょうか。」

芹雄:「愛蓮さんは…冒険者…ですよね?」

愛蓮:「ええ。そうですよ。」

芹雄:「もし、今後空いていたら俺とパーティーを組んで頂けませんでしょうか…?」

愛蓮:「あ〜…申し訳ありません。私、既に他に仲間と一緒に行動しているので…」

芹雄:「あ…そうですか。あ、じゃぁ仕方ないですよね。お仲間がいらっしゃるんですか。そうですか…」

愛蓮:「えぇ。ですから、折角のお誘いですけど、ごめんなさい。」

芹雄:「いえいえ、こちらが勝手に誘っただけですから、お気になさらずに…あ!スイマセン!お時間取らせちゃって…どうぞお通りください。」

愛蓮:「はい、それでは…ごきげんよう、芹雄さん。」

 そして、去っていく愛蓮さん。

芹雄:「う〜む…最後まで丁寧な人だったなぁ…素晴らしい。ま、残念だが諦めるしかないな。」

 そして宿に向かう芹雄だった…


 新たなる世界、『アクエルド』。そこにやって来た芹雄は無事に1日を過ごす事が出来た!
只…目的は達成してないけど。
二日目以降は一体どうなるのか?それはまた次のお話!
以下次号!


第十九章

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