ルナティックドーン 前途への道標
〜剣士【芹雄】の冒険記〜

〜 第二十五章 〜

生の証



 ≪ギャ…ギ、キイィィ〜…≫
錆びた鉄が磨れる音と共に重い扉を開け、芹雄がそこから姿を現す。
芹雄は元の世界【バイラーダス】に帰って来たのである。
時間は丁度昼くらいか、明るくて気温も丁度いい。芹雄は一つ深呼吸をして歩き出す。

【芹雄】:(さて…宿に帰るか。っと、その前に多治見さんに挨拶していかないと。)

 探しに行こうとしたら、丁度多治見さんがこちらにやって来た。どうやら人が通ると感知して反応する物があるらしい。

【多治見】:「戻られましたか、芹雄殿。向こうの世界は如何でしたかな?」

 軽い挨拶をし、向こうでの出来事を簡潔に話す。

【多治見】:「ふむ。出過ぎる事も無く、最低限の手助けはした…という事ですな。よい心がけです。」

【芹雄】:「まぁ、ちょっと出過ぎたかも知れませんが…俺の存在なんぞすぐに消えると思うので大丈夫な筈です。」

【多治見】:「左様ですか。目的も達成なされた様で、何よりです。」

【芹雄】:「ええ。いい体験が出来ました。」

 会釈をし、その場で別れた。その後、寺を出て宿に向かう芹雄だった。


 東方都市のとある宿屋…芹雄がこの町に来た時いつも利用してる所である。

【芹雄】:「よう、マスター。久し振り…ってことも無いか?」

【マスター】:「ん?おお!芹雄じゃないか!今帰ったのか?お前にしてはえらく時間が掛かったな…」

【芹雄】:「ああ。ちと梃子摺ってな。でも目的は達成したぜ。」

【マスター】:「そうか、さすがだな。そうそう、お前の連れ、3人とも来たけどお前が居ないと知ってかなりがっかりしてたぞ?」

【芹雄】:「あー、そうか…みんなには悪いことをしたなぁ。」

【マスター】:「また訓練しに行ったと思うから明日あたりにでも会いに行ったらどうだ?」

【芹雄】:「ん…いや、いいや。もうすぐ終わるだろうし。」

【マスター】:「そうか?…なんか疲れてるみたいだな。部屋、いつものところが空いてるからそこ使っていいぞ。」

【芹雄】:「お?そうか…すまんな、いつもいつも。」

【マスター】:「気にすんな。じゃ、おやすみ。」

【芹雄】:「ああ…それじゃ。」

 話を終え、いつも使ってる部屋に向かう。部屋に入り、荷物を置きベッドに倒れる。

【芹雄】::(うーむ…疲れてるのかな…っていうか、そら疲れるか…今日だけでハイレベルな戦いを2回やって休憩無しだもんな〜。ははは…)

 うとうととし始め、やがて眠りに落ちていった…


≪コンコン……コンコン。ガチャ。≫
何かの音が聞こえた…

【芹雄】:(……………ん…………あぁ、いつの間にか俺寝てたのか…)

 ゆっくりと起き上がり、大きな欠伸をしながら体を伸ばす。そして目を擦りながら部屋の中を見渡していると…

【女将】:「おはよう。芹雄さん♪」

 ベッドの真横…いや、芹雄の真横に女将が居た。

【芹雄】:「あ〜、おはy…………」

≪ピキッ≫

 芹雄凍結。そして…

【芹雄】:「ぎゃお―――――ッ!!!おっ、織江さん!!なんで俺の部屋に!?」

【女将】:「あら…酷いわ…無理矢理つれこんでおいてその言い草…私、泣いちゃうからッ!」

【芹雄】:「はいはい…そんな事しませんて。」

【女将】:「ン、もぅ!ノリが悪いんだから…低血圧?」

【芹雄】:「まぁそうですけど、それはいいですから、なにか?」

【女将】:「ええ、お食事なんですがそろそろ召し上がった方がいいですよ?」

【芹雄】:「あぁ、食事ですか…でもそんな、呼びにいらっしゃらなくても…」

【女将】:「でもさすがに丸一日召し上がってないので…」

【芹雄】:「はぁ…って、え?…それって…まさか俺…」

【女将】:「ええ。昨日は熟睡なさってましたよ。食事の度に呼びに来たんですけど、覚えてないということは…」

【芹雄】:「マジですか…参ったな…」

【女将】:「さ、とにかく何か召し上がらないと体が弱ってしまいますよ?胃にやさしい物を作りましたので、食堂にいらして下さいね。」

【芹雄】:「あ、はい…」

【女将】:「では。」
≪ガチャ…≫

 女将が出て行った後の自室で、少し呆ける芹雄。

【芹雄】:「むぅ…そこまで疲れてたのか…まぁ、さすがにハイレベルな戦いを2連続でやれば身体は薬で癒せても疲れは癒せないか。」

 2度頭を振り、ゆっくり立ち上がって伸びをし、「おし!」と一度気合を入れ、食堂に向かう。

【マスター】:「お、やっと起きたか。芹雄。おはよう。よく寝たようだな。」

【芹雄】:「あぁ…おはよう。マスター…そこは、『よく眠れたようだな』、だろ?普通。」

【マスター】:「まぁまぁ、そんなことはどうでもいいから。メシ食え、飯!冒険者は身体が命!栄養をつけねばこの先やっていけんぞ!?」

【芹雄】:「あまりどうでもいい事ではないんだが…頂くよ。」

 暫くして、女将が食事を運んで来た。ご飯・豆腐の味噌汁・煮物・半玉くらいのうどん・温泉玉子・白い飲み物…牛乳か。見た目…普通の朝食なんですが…

【女将】:「さ。召し上がれ♪」

【芹雄】:「…えーと、あの…胃にやさしい食事…というのは?…メッチャ普通の朝食じゃないっすか。普通おかゆとかそんなんじゃないッスか?」

【マスター】:「フフフ…まぁ、食ってみろって。それとも、織江の腕が信用できないとでも?」

【芹雄】:「しない訳無いだろう…判りました、戴きます!」

 ニコニコと微笑みながら食事する芹雄を見守る二人。それを横目にガツガツと…はいかず、ゆっくり味わいながら食す芹雄。

【芹雄】:「むッツ!こ…これはッ!…柔らかく熱過ぎないご飯。同じく熱過ぎない薄味だがしっかりとダシの効いたの豆腐の味噌汁。煮物は…油物が一切入ってない!野菜だけの煮物なのか! しかし、味はしっかりとついている…しかもずべて柔らかい!…そうか、うどんも半熟玉子も牛乳も…全て消化の良い胃に優しいものばかり!しかも栄養の付く見事な調和がなされた完璧な食事だぁ!!」

【女将】:「そこまで説明的に独り言言わなくても…」

【マスター】:「まぁ、あいつなりの感動と感謝なんだろう。言わせてやれ。」

 その後、涙を流しつつ『美味いにゃり〜、美味いにゃり〜』と連呼しつつ箸を進める芹雄
そして全てを平らげ…
≪パァン!!≫
と手を眼前で合わせ…

【芹雄】:「ごっつぁんでした!!サイコーでごわした!!」

 と、何故かエセスモウレスラー風に言って一礼。

【女将】:「いえいえ。御粗末さまでした。」

【マスター】:「ふっふっふ…どうだウチの嫁の腕前は。恐れ入っただろう?」

【芹雄】:「あぁ…完璧だ…サイコーの嫁さんだ…」

【マスター】:「やらんぞ。」

芹雄:「なんだよー、ケチ〜。だったら直接言い寄っちゃうもんねー。」

 そういって、女将の方を向き、顔をキリっと引き締め、歯が輝くような笑顔で…

【芹雄】:「女将…いや、織江さん!!」

【女将】:「はい。なんでしょうか?」

 と、小首を傾げながら聞き返す女将。

【芹雄】:(あぁッ!?畜生、可愛いなぁ!この人絶対判っててやってる!)
    「俺と…付き合ってくれ!!」

【女将】:「まぁ…そんな真剣な顔で迫られたら…私…わたし…」

【芹雄】:「うんうん!」

【女将】:「私、あなたに魅力を感じないんです。ごめんなさい。」

【芹雄】:「うわお。」

【女将】:「なんてね。私はもう主人にしか魅力を感じなのよ…ね?あなた…」

【マスター】:「織江…」

【女将】:「善十郎…」

【芹雄】:「ちょ…ちょっと、オフタリサン? な、なんだ!?この黄色いようなしかし淡いピンク的な雰囲気は!?」

 見つめ合う二人…妖しくなって来たムード、そして自然と近付いていく…そして。

【マスター】:「織江ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

【女将】:「善十郎〜〜!!」

≪ガバっちょ!≫

【芹雄】:「だあぁ!!ちょ、アンタら!店の中で堂々と何しとるか―――――!!客に見られたらどうすん…ん?あ、あれ?」

 振り返って食堂を見るが、人は全員で芹雄とマスター夫婦の3人しか居なかった。

【芹雄】:「…まったく。変に気を遣いやがって…ここまでする必要ねーっての。」

 少し呆れ、そして少し嬉しそうに微かに笑い…

【芹雄】:「ま、気遣いはありがたく受け取ったよ。あとは二人で気の済むまでやりな…俺はちょっと出かけるよ。」

【マスター】:「はぁはぁ…織江…愛してるよ織江ぇええぇ…」

【芹雄】:「…はぁ…聞いちゃいねぇ。」

 今度は思いっきり呆れてその場を後にした。
部屋に戻り、装備を整え外に出る。日は既に傾いており、夕刻に近い。
広場の椅子に腰掛け、ちょっと物思いに耽る芹雄。

【芹雄】:「…結構…楽しかった…よな。皆にはちょっと悪い事してしまったな…はは…あいつら元気でやってるかなぁ。ま、もうすぐ会えるけど…レナスはもうデスドラは倒したかな?………ふぅ…」

 アクエルドに居た時の事、仲間の事、レナスの事…いろいろ考える事がある…

【芹雄】:「むぅ…やばいなぁ。気になる気になる。まぁ、死ぬ事はまず無いと思うが…ぬぅぅ…」

 今度は苛々し始めた。
先ほどから一人でニヤけたり、笑ったり、顔を顰めたり、イラついたり…と、端から見るとかなり妖しい人物であろう。

【芹雄】:「ん!よし!確認しに行こう!見に行くだけだからいいだろう。何もしないで苛苛しっ放しってのも気分悪ぃし。」

 そして、意気込んでいきなり立ち上がる。そして早歩きで古ぼけた寺院に向かう。


 寺院に到着。そして、

【芹雄】:「たのもう!!多治見殿、門使わせてもらう!いいよな!?前、声掛けたら使っていいって言ってたもんな!じゃ、そゆことで!

『びしっ!』
――と、伸ばした平手を縦に掲げ、立ち止まらず真っ直ぐにリンクゲートへ向かう。

【多治見】:「はて?今何か騒音が…気のせいか?」

 そして出遅れた多治見坊主。

≪ギュアァ………ンッ!≫
芹雄は再び(三度?)アクエルドへと向かった。


 アクエルド・サランドンに着いた芹雄。外に出た途端、変な感じがした。

【芹雄】:「…?なんだ、これ…この感じ…」

 デスドラゴンは退治された様で、凶悪な気を感じる事はなくなっていた。
しかし、それにしては…

【芹雄】:「…人の気配…しない事も無いが、何故人っ子一人出歩いてないんだ…?」

 少し街を歩いてみるが、全然人が見当たらなかった。
『壊滅したとか?』と思ったが、人の気配は微かにするので、その可能性は無い。
いろんな想像をしてると、何か動く物を見つけた…といっても、結構遠くの位置。しかも物凄いスピードだった

【芹雄】:「な!なんだぁ?…と、とにかく追わねーと…」

 見失ってしまったので、気配を頼りに探す事に。
しかし、ご丁寧に気を抑えて行動してるせいで探し難い。が、移動する微かな気を感じ、それを目指して追う芹雄。
何故か人目を避けようとしているのか、細い路地、裏路地を通る。ここの地理に詳しくないので追いにくい事この上ない。
既に何個かの障害物は破壊している

【芹雄】:(ッ…やるな。しかし、追い付けない速さではないな…っておわッ!?)

≪ボフっ!≫『にゃー。』 

【芹雄】:(んガッ!猫!?危うくぶつかってミンチにしてしまうところだった…?ん、止まった…?)

 少し距離のある所でこちらも止まり気配を完全に消し、猫を抱え、屈んで様子を伺うと…発見した。
どうやら男女のペアらしい。で、男の方がこちらを見ている。どうやら、向こうも芹雄の気を感じたらしい。

【???】:「何者だ、出て来いよ。」

【芹雄】:(やべぇ!気付かれてる…何とか誤魔化さねぇと…ん?)

 ふと持っている物に気付く。ちょうどいい物があった…取って付けた様なネタだが、この際仕方あるまい。
「にゃー。」
しかも都合よく鳴いてくれた。

【???】:「猫の鳴き真似などしても無駄だぞ。諦めて出て来な。」

【芹雄】:(…いや、本物なんですけど…って、そうじゃなくて。うわぁぁ…駄目だぁ…って、何で隠れる必要があるんだよ…ふぅ、焦って損し…あ!)

 立ち上がろうとしたところで、猫が飛び降りて、歩いていった。

【???】:「なんだ…本物の猫だったか………うし、行くぞ。」

【???】:「ああぁ!待ってよー!」

 そして、また猛スピードで駆け出していった。

【芹雄】:(うぁ!?…またかっ!…いや〜、危なかったなぁ…しかし、女の方…聞き覚えのある声だったな…)

 暫く追った末、目的地であろう場所に到着。大きな屋敷だ。
物凄く見覚えのある建物だなぁ…と思っていたら、フェンリルだった。
その中に、やはり警戒しながらサッと入っていく二人組。一応ついて行く事にした。
2人はフェンリルに入った途端、滅茶苦茶警戒してゆっくり進んでたのでかなり追いやすい。
とある部屋の前で立ち止まった二人。何か話してるようだが、こそこそ喋ってるようで聞こえない。
しかし、既にかなり近い距離に居る。しかし、こっちは完全に気配は消しているので発見される事は無いだろう。

【芹雄】:(まぁ、見付かった所で…相手はレナスだということが判ったし、別にいいのだが。相手の男が何者かは何者かは知らんが。…おや?向こうから来る女性は…ミルさんじゃないか。)

【ミル】:「お帰りなさい。泥棒さん。」

【芹雄】:(何っ!あの男、泥棒なのか!!……あれ?でもレナスと一緒に行動してるし…「お帰りなさい」、とは?)

【???】:「お、俺は何もしてないぞ!?悪いのは全部こいつだからな!」

【レナス】:「わ!それが実の親の娘に対する仕打ち!?」

【???】:「うるさい!お前みたいな娘俺にはいない!」

【レナス】:「ひどい!父さんに言われたから嫌々やったのに……!」

【???】:「おい!人に罪をなすりつけてるなよ!」

【レナス】:「しばらく牢屋で頭を冷やすんだね!」

【???】:「それが実の親に対する娘の仕打ちか!?」

【レナス】:「そっちからやって来たんでしょ!」

【???】:「そ、そうだ!口封じだ!それしかない!」

【レナス】:「見られたからには死んでもらおうか……って、だから悪い事は何もしてないでしょ!?」

【芹雄】:(…………似たもの同士、か。成る程ねぇ。あれがレナスの父親…『シン』…だっけか?お、ミルさん笑ってるぞ。)

【ミル】:「ふふふ、楽しそうね。わたしも混ぜてもらえないかしら?」

【シン】:「って…何だ。ミルヴァーナか。驚かせるなよ…」

【レナス】:「お母さん…お城に行ってなかったの?」

【ミル】:「ええ。だって、あなた達が帰ってくるのに出迎える人がいないと寂しいでしょう?」

【芹雄】:(…さすがだな、ミルさん…立派だよ。)

【レナス】:「皆、わたしが死んでると思ってるのに……よく生きてると確信できたね?」

【芹雄】:(……?どういうことだ。『皆私が死んでると思ってる』……)

 その言葉を聞き、芹雄は考え事に没頭する。
先程の言葉…『皆私が死んでると思ってる』……
何故そう思うのか。デスドラゴンは倒されたのだから、負けたとは思ってない筈だ。相討ち?それだったら捜索隊も出てる筈だ。
死体は発見されない筈。生きた証拠が目の前に居るからな。行方不明?迷宮がなくなったから…だったら死亡扱いにすることはおかしい。
……一番嫌で考えたくも無い事が頭を過ぎる…
―――用済みな危険分子は闇に葬り去るのが一番―――
人は皆、強力な力を持つ物に対しては恐れの気持ちがあるものだ…英雄だろうが勇者だろうが、そういう目で見られる事もある。これは無いと信じたい。
結局の所…全員無事生還すると信じてないんだな。愛蓮さん達も…信じてないってことか。
一目見れば全員安心するだろうに…何故行こうとしないんだろう。
レナス自身に先程の嫌な扱いをされるのを避けているというのなら…判らんでもないが。

【レナス】:「じゃあ……そろそろわたし達は行くよ。またね…」

【ミル】:「レナス…これを持っていきなさい。」

 そういって、娘に黄色い液体入りの瓶…ポーションか何かだろう…を渡す母。

【レナス】:「何これ?」

【ミル】:「わたしが子供の時お母様からもらったお守りよ。わたしはもう心配いらないからこれは必要ないの。だから今度はわたしがあなたに渡す番よ。」

【レナス】:「……ありがとう。ありがたく貰っておく…よ……ぅ…ぅ…」

≪ばっ!≫
母親に抱きつき、声を殺して泣く娘。優しく頭を撫でる母。

【芹雄】:(ううぅ…えぇ話やなぁ〜…おっちゃん、メッチャ感動しとんでぇぇ〜。)

【シン】:「…俺には?」

【ミル】:「あなたは殺しても死なないから必要ないでしょう?」

【芹雄】:(うっを。)

【シン】:「ったく、これが妻の言葉だと思うと嬉しくて涙がでるぜ。」

【ミル】:「そんなに感謝してくれなくても………」

【シン】:「してねぇっつーの!お前も相変わらずのボケっぷりだよな!」

【レナス】:「すん……すん…」

【ミル】:「…落ち着いた?」

【レナス】:「…うん…」

【ミル】:「じゃ、頑張ってきなさい。また元気な姿を見せに帰って来てね。」

【レナス】:「……うん。行って来ます。母さんも元気でね!」

 ≪タタッ…≫
レナスは元気良く走って先に行ってしまった。
そして残った夫婦…

【ミル】:「レナスを……よろしくお願いします。」

【シン】:「さぁな。それは保証できん…だがあいつも一応冒険者だからな。自分の身は自分で守るだろうさ。」

【ミル】:「そう……シン……貴方への御守り…受け取ってもらえますか…?」

【シン】:「ん?…!」

 顔を逸らしているシンに寄り添って、顔を見上げ、目を閉じ、背伸びをし…ミルの動きに気付いたシン。思わずそっちに顔を向ける…

【ミル】:「ん………」

 ≪ちゅっ≫

【芹雄】:(うわー!キスした!キスした!!しかもミルさんから!おおお〜…)
↑出歯亀

 突然口付けされて驚き、思わず肩を掴んでミルを離すシン。

【シン】:「な、な、なななな…!?」

【ミル】:「これが私からの御守りです……」

【シン】:「ミ、ミル!お前………」

【ミル】:「あっ……」

 ≪ぽろぽろ…≫
シンの言葉に反応して涙をこぼすミルヴァーナ。

【シン】:「おっ、おい!なんで泣く!?離れたからか!?でも、急にキスしてきたお前も…」

【ミル】:「…私を…ミルと…呼んで下さるのですね…嬉しい…う…うぅ…」

【シン】:「あ。い、いや…これは…ちょっと焦ってだな…省略しちまったっていうか…その…」

 ≪ぱさっ≫
シンに抱きつくミルヴァーナ。シンは黙ったまま…暫くそうさせた。

【シン】:「………まぁ…なんだ。元気で暮らせよ…」

【ミル】:「…はい。あなたも元気で…」

【レナス】:「何やってるの?早く行くよ!」

【シン】:「わかってる。じゃぁな。」

【ミル】:「ええ、またお会いできる時を楽しみにしていますわ。」

【芹雄】:(……なんか…俺、とんでもない現場を見てしまったのでは…?うはー…何故か俺がドキドキしてるよ。)

 そして二人とも去って行った。

【ミル】:「…さて、と。」

≪くる。≫
芹雄の居る方に向きを変えるミルヴァーナ。

【芹雄】:(げ…やっべ!こっち来る!逃げないと…)

【ミル】:「…そこにいらっしゃるんでしょう?芹雄さん。」

【芹雄】:「!? な、なんで…なんで判ったんですか?…ミルさんも超人?」

【ミル】:「んー、ひょっとしたら居るんじゃないかと思って適当に声掛けてみただけなんですけどね…本当に居ましたね。」

【芹雄】:「がは!?だ、騙された!」

【ミル】:「ずっと見てらしたのですね?先程の一件…」

【芹雄】:「先程の一件?…あぁ、ちゅーの事ですか?」

 さらっと、あっさり墓穴を掘る芹雄。

【ミル】:「えぇ。それだけじゃないですけど。」

 しかし、こちらも普通の会話をしてるかのように動じず、ツッコミもしない。

【芹雄】:「い、いや〜。町で見掛けた不振人物を追って来ただけで、覗くつもりなんて無かったんですよ〜。」

【ミル】:「そうですか。でも、結果的には私たちの一家のプライバシーを覗いた訳ですね?」

【芹雄】:「う…は、はい…そうです。すいません…」

【ミル】:「いいでしょう。許します。別に怒ってる訳ではないですし。」

【芹雄】:「へ?…じゃ、何で…」

【ミル】:「た・だ・し。条件があります。今から言う事をしていただければ、この件は不問としましょう。」

【芹雄】:「じょ、条件…ですか?」

【ミル】:「ええ。それは――――――」


 サランドン王城…ここではこの日、デスドラゴンが倒された事を喜び、この平和を齎した者を称える宴が開かれていた。
街の住人全てがここに集まっているようだ。街に人が居ないのはそのせいか。それでもモンスター襲撃の被害の所為か、首都にしては人が少ない方だ。
芹雄がここに来た時には既に日は沈んでいたが、宴が終わる気配は無かった。むしろ日が沈んだ事で活気付けようと盛り上がってる感じだ。
その人込みの中を、芹雄はある特定の人物を探す為進んで行く。ミルヴァーナとの約束を果たす為に…
 そして、人気の無い、騒がしい広場とは掛け離れた城の裏側。それらは存在していた。
ゆっくり近付いて行く芹雄。丁度いい具合に6人ともその場に居た。何か話しているのかと思ったら、全員黙って俯いていた。動作といえば、杯を傾ける位のものだ。
たまらず、話しかける芹雄。

【芹雄】:「やれやれ…平和になった事が不満だとは…とんだ英雄達だな?」

 一同、同時に顔を上げ聞き覚えのある声にハッとし、その声のした方に向く。

【愛蓮・リーナ】:「芹雄さん!?」
【ディオ・マシュ】:「おまえは…」
【玲奈】:「あ…!」

【芹雄】:「ったく、この宴会の主役達がなんでこんな寂しいとこで黙って酒呑んでんだよ。」

【玲奈】:「芹雄……ぅ…うぅっ……」

 ≪ダッ!…がばっ!≫
走ってきて抱き付いたかと思うと、いきなり泣き出す玲奈。

【玲奈】:「……うっ…ううぅ……レナが…レナがぁ…っ!」

【芹雄】:「あぁ。判ってる。話は聞いた。」

【ディオバーク"】:「俺は…俺はどうすればいい…?俺の所為で…レナは…」

【芹雄】:(む…嫌な予感。)

 …が、的中。仲間同士で責任の取り合い。押し付け合いならさっき見たので判るが、自分の所為にしようとする話し合いは見てて面白くない。
リーナとポールは止めもせず黙って見守っている。玲奈は只泣くばかり。

【芹雄】:「ふぅ…やれやれだな、まったく。玲奈、もういいか?」

【玲奈】:「…あ…うっ、うん……」

【芹雄】:「で、だ。いい加減にしろよ?お前ら。」

 怒気を含んだ強い言葉に、一同動きが止まり芹雄を見る。

【芹雄】:「結局の所…この中でレナスがデスドラを倒して無事で済んだと思ってる奴はいない、ということだな。」

【一同】:「………」

【芹雄】:「元マスターのあんたら3人も、レナスの強さを疑うとはな…一度は戦った相手だろうに。」

【玲奈】:「でも私達3人がかりでも歯が立たなかった…」

【芹雄】:「それは俺でも同じだったろう。」

【愛蓮・ディオ・マシュ】:「え!?」

【玲奈】:「う…」
【リーナ・ポール】:「……」

 ≪コクリ。≫
『イタイところを』といった表情で頷く元マスター達。

【芹雄】:「その俺とほぼ互角に戦っていたんだ。その強さは判る筈だ。」

【愛蓮】:「そうですけど…でも…」

【ディオ】:「それに迷宮は崩れてしまった…あの状態で生きているという保障は…」

【芹雄】:「…………あ"あ"あ"あ"〜!もー、お前らなぁ…!だったら教えてやる!!来い!!」

 ≪ガシッ!……どさっ≫
抱き抱えられたと思ったら、肩に乗せられる愛蓮。

【愛蓮】:「…え?あ、あらら?」

 ≪どごッ!≫

【ディオ】:「の"!?……」

 ≪ガシッ!ずりずり…≫

【マシュ】:「……ん?」

【芹雄】:「ふん!!」

 ≪どむっ!≫

【マシュ】:「ぼえぇぇぇぇ……」

 ≪ガッ!ダダダ…≫

【芹雄】:「次はおまえかぁぁぁ!!!」

【玲奈】:「え…?い…いやぁぁぁぁぁぁ!!」

 ≪シュタタタタタ…≫

【芹雄】:「むわぁぁぁぁてぇぇぇぇぇ!!!」

 ≪ドドドドド…≫

【愛蓮】:「ひゃあぁぁぁぁぁ!?」

 ≪ズズズズズ…ごりっ!≫

【ディオ】:「パぅわ!?」

 ≪ずどどどどど…………≫

【リーナ】:「……どうします?」

【ポール】:「行くしかあるまい…」

 ≪たったったった…≫


【芹雄】:「コー…ホ〜…、コー…ホ〜…」
【玲奈】:「はぁ…はぁ…」

【芹雄】:「ふっ、ふふふふふ…もう逃げられんぞ…」

【玲奈】:「ひ…ひぃぃぃ…」

 数分走り回った結果…しかも外だけではなく場内にも及んだ鬼ごっこ…
2人が迷い込んだ場所は…王が演説する時に使用する広場を見下ろすバルコニーであった。

【芹雄】:「…なんてな。さぁ、鬼ごっこは終わりだ。」

【愛蓮】:「あの…じゃぁ、私も降ろしてください…」

【芹雄】:「ん?あぁ、忘れてた。メンゴメンゴ。」

 ≪ドサドサァッ、とっ…≫

【ディオ・マシュ】:「ぐぉ……」

【玲奈】:「……鬼の形相で追ってくる必要無かったじゃない…」

【芹雄】:「オラ!お前らも起きろ!」

 ≪パァン!パァン!≫

【ディオ】:「ぶべら!」

【マシュ】:「はべら!」

【愛蓮】:「や、やめてください芹雄さん!二人とも死んじゃう!!」

【芹雄】:「ん?…あぁ、ごめんごめん。男だったからつい。」

【玲奈】:(つ…ついレベルで人を半殺しにするの?)

【リーナ】:「あ。いたいた。ポール、こっちです。」

【ポール】:「……おぉ、ここにいたか。」

【芹雄】:「ん…これで役者がそろったな。」

【リーナ】:「いったい何を教えるというのですか?」

【芹雄】:「まぁ慌てるな。今からそれをやるから、言うとおりにしてくれ。」

【玲奈】:「え……う…うん。」
【リーナ】:「はい。」
【愛蓮】:「はい…あの…二人が気絶したままなのですが…」

【芹雄】:「っかー…!相変わらず使えねー奴等だなぁ!こんな大事な時に呑気に寝やがって!」

【愛蓮】:(そ…そうしたのは芹雄さんですよ…)

【芹雄】:「しゃぁねぇ…おっさん。力のマスターだったよな?悪いけどこいつら持ち上げて正面向けて立たせてくれるか?」

【ポール】:「む?うむ…こうか?」

 右手にディオバーグ、左手にマシュダハム…という形で持ち上げるポール。

【芹雄】:「あぁ、OKOK。倒れなかったらいいから、あとでそのようにしてくれ。」

【ポール】:「うむ…承った。」

【芹雄】:「じゃぁ、全員バルコニーの際に下を見下ろす感じで立ってくれ。」

【リーナ】:「…あの…もしかして演説しろという事ですか?」

【玲奈】:「えぇ!?ちょっ、冗談じゃないわよ!それに何を語れというの!?」

【芹雄】:「まぁ待て。似てるがちょっと違う…演説するのは俺だ。」

【愛蓮】:「え…?それは私達に教えることに関係あるのですか?」

【芹雄】:「無論。丁度いいからこの街の全員に教える。」

【玲奈】:「そう…」

 そして、全員がバルコニーの際に立つ。

【芹雄】:「ん…これじゃ全員の顔が判らんかな?たいまつを…」

【リーナ】:「え…?ここに松明なんてありませんよ?持って来るんですか?」

【芹雄】:「はっはっは。そんな暇ありませんよ。まぁ、見てなさいって。」

 ≪かぽっ≫
そう言っておもむろに兜を被る芹雄。次の瞬間!
≪ぺか―――――≫

【ポール】:「うおっ!?」

【玲奈】:「お…黄金兜…」

【愛蓮】:「べ…便利ですね…」

【芹雄】:「先に言っておく。俺はお前らを悪く言うから、レナスの事で自分に非があると思うなら黙って聞いてくれ。」

【一同】:「……」

【芹雄】:「さて…んじゃ始めるぞ。おっさん、2人を持ち上げてくれ。」

 『すぅぅ…』
 『…ごくり。』

芹雄が息を吸う…『いよいよ始まる』、という緊張感の為か唾を飲む一同…そして…

【芹雄】:「げほげふっ!うげ…息吸い過ぎた。」

 ≪ズコッ≫
―――お約束であった。
ガクッと膝を折る一同…

【玲奈】:「あ、あのねェ――――」

【芹雄】:「聞け!サランドンの民よ!」

【玲奈】:「!?ちょ、そうくる?普通…」

 そういいながらも、正面を向き、顔を強張らせる玲奈。他の皆も黙って正面を向いている。
一瞬にして、湧いていた広場の騒ぎが収まり、バルコニーに視線が集まる。
そして、『なんだなんだ』『また王様の演説か?』という普通な反応の他に、
『お、英雄達の顔見せか!』『平和を齎した英雄達にかんぱーい!』という称えの声…
そして『ん?なんか一人増えてるぞ?』『頭が光ってる!?』『なんだ、バルコニーで芸でもするのか?』という声…
『おい…あれ前の異世界の剣士じゃないか!?』『おぉ、そういえばもう一人の英雄を忘れてたな!』『キャー!!芹雄さ――ん!!』という、冒険者達の声が聞こえる。

【芹雄】:「皆に報告がある!ここに並ぶ者達は今日、『英雄』と称えられた!」

 その言葉の後、『うおおぉぉぉぉぉ!!』という歓声。

【芹雄】:「しかし、この者達は愚かなる罪を犯しいていたのだ!」

 その言葉にざわめく民。そして静かになってくる…聞く気満々のようだ。

【芹雄】:「まず1点目!レナスの生死の報告について!」

 やはりざわめく民。収まる気配が無かったが、芹雄は構わず続けた。

【芹雄】:「ここに居る討伐隊3名の報告…『デスドラゴンの退治はレナスの犠牲による物』だという!」

 ざわめく民…そして、下唇を噛み締め、震えながら俯く愛蓮。

【芹雄】:「2点目!これを信じた事、またその報告を聞き、鵜呑みにした3人のマスターも同罪!!」

【一同】:「ッ……!」
今度はマスター達も俯く。信じたくなくても信じてしまった自分達が許せないのであろう。

【芹雄】:「最後!レナスは本当に死んでしまった、と決め込んでいる事だ!!」

『……………………』

 この言葉には民衆もざわめく事無く静まり返った。自分達もそう決め込んでいた、と反省しているのだろうか。
愛蓮は涙を流し、泣いていた。

【芹雄】:「しかし!1点目の報告…この報告は全くの誤報だという事が判明した!何故なら―――」

 一瞬にしてが大きなざわめきとなる。ハッとする愛蓮。目を見開き芹雄の方を向く。その目は…期待に満ち溢れていた。

【芹雄】:「レナスはデスドラゴンを倒したあと、生還しているからだ!!」

 一瞬の沈黙…バルコニーに居る全員――その言葉で気付いた2人も含め――芹雄を見る。

【芹雄】:「生き、歩き、話す姿を俺はしかとこの目と耳で確認した!!」

『うわああああああああああ!!』
大歓声。何か物も投げてるような気もするが、こっちには飛んでこないのでよしとし、演説を続ける。

【芹雄】:「しかし、これらの罪についてだが…この者達を責めないでやって欲しい。」

【一同】:「…!?」

 民全体から『?』という感じが読み取れるほど静まり返っている。

【芹雄】:「このように死んだ風に見せたのは、他でもない…レナス自身である!!」

【玲奈】:「なッ、なんですって!?」
【愛蓮】:「そんな!…どうして!?」
【ディオ】:「バカな!何故そんな事をする必要がある!!」

 『ざわっ…!!』

3人に一気に問われる。しかし…

【芹雄】:「まだ演説の途中だ…言った通り、黙って聞いてろ…」

【3人】:「…ッ!!」

睨まれて、元の位置に戻って直立する。しかし、顔は嬉しさと安堵で緩みまくっている。

【芹雄】:「レナスは再び旅立った!…仲間に別れを言いたくない、と…そう言っていた!」

 『ざわざわ…』暫くざわめきが続く…
『で、でも…とにかくレナスは死んでなかったんだろ?』『相討ちじゃなかったんだろ?』『レナスはデスドラゴンに勝利したんだ!』という声。

【芹雄】:「とにかく、俺の言いたい事は『レナスは生きている』という事だ!以上!」

『うおおおおおおおおおおおおお!!!』

 大歓声。暫くそれは止まなかった。
城の中に入る芹雄。それを追う6人。

【芹雄】:「ふぅ…終わった終わった。」

【玲奈】:「芹雄!」

【芹雄】:「ん?どうした。何か問題あったか?」

【玲奈】:「そうじゃない!レナの事よ!」

【芹雄】:「だからさっき言ったろ?生きてる、って。」

【玲奈】:「ちーがーう!その後よ!『死んだ風に見せた』っていう、あれ!」

【芹雄】:「あぁ、あれか。あれはなー…」

【一同】:「……………」

【芹雄】:「わり、あれちょっと嘘だ。」

【愛蓮】:「え?…それって…」

【芹雄】:「本当の理由は知らねーんだ。なんか勝手に準備済ませて勝手にどっかいっちまった。」

【リーナ】:「あなたは…いったいどこでレナを見たのですか?」

【芹雄】:「ん?…あぁ、最初は街の中で。」

【一同】:「はああああああ?」

【芹雄】:「んで、追いかけてたらフェンリルに着いて、中でミルヴァーナさんといろいろ喋ってたぞ。」

【愛蓮】:「そうすると…ミルヴァーナさんも証人と言う事ですか?」

【芹雄】:「あぁ。そうなるな。んで、ミルヴァーナさんに頼まれて、ここに来たって訳だ。」

【愛蓮】:「頼まれて…?」

【芹雄】:「おっと…関係無い事まで喋っちまった…」

【ディオ】:「なぁなぁ、それってどういうことなんだ?」

【芹雄】:「あ"ぁ"!?何でテメーなんかにそんな事言わなきゃならねーんだよ!失せろ!」

【ディオ】:「うぐ…く、くそ…」

【愛蓮】:「どういうことなんですか?」

【芹雄】:「えっと、実はですね―――」

【ディオ】:「ンがっ!?」

【マシュ】:「…いい加減、相手にされないということに気付け。な?」

 ≪ぽんぽん≫
肩を叩かれ慰められる男。惨めである。

 * * * * * 回想 * * * * *

【芹雄】:「じょ、条件…ですか?」

【ミル】:「ええ。それはですね、実はレナスはみんなに死んだと思われているんです。」

【芹雄】:「え?なんでまた…デスドラゴン倒したんだから堂々と行けばいいのに。」

【ミル】:「さぁ…それは私も解りかねますが…とにかく、当のレナスはもう異世界に旅立ってしまいました。」

【芹雄】:「異世界に?それって、俺の世界にって事ですか?」

【ミル】:「それも解りかねます。しかし、道は他に知らないのでしたらそこなのでしょう。」

【芹雄】:「ふむ…」

【ミル】:「それで…お願いがあるのです。」

【芹雄】:「え?あ、あぁ。そうでした。はい。何でしょう。」

【ミル】:「レナスが生きていると言うこと…それをこの街のみんなに教えてあげて欲しいのです。」

【芹雄】:「ふむ。そうですか、わかr…って…こっ、この街のみんなぁ〜〜〜!?」

【ミル】:「はい…どうか…よろしくお願いします。直接見られた方なら説得力があるでしょうし。」

【芹雄】:「え…でもそれだったら……あ、いや…判りました。任せて下さい。」

【ミル】:「ごめんなさい…私がもう少し強い体だったら…」

【芹雄】:「いえ…大丈夫です。気を遣わせて申し訳ありません。」

【ミル】:「「いいえ…それと…貴方の世界でレナスに会えたら…その時はどうか、あの子の助けになってあげてください…」

【芹雄】:「えぇ、判りました。安心して任せて下さい。それでは…さようなら。」

【ミル】:「はい、さようなら…お元気で。」

* * * * * * * * * * *

【芹雄】:「―――と、言う訳だ。」

【愛蓮】:「はぁ…ミルヴァーナさん、しっかりした母親なんですね…」

【ディオ】:「いっつもぽやぽやのほほんとしてるように見えたが…意外な一面だ。」

【マシュ】:「………ステキだ。」(ぽっ)

【愛蓮・ディオ】:「え"!?」

 ≪ズザッ≫
引く仲間。

【玲奈】:「芹雄。」

【芹雄】:「ん?なんだ?」

【玲奈】:「さっきの話からすると…レナはあなたの世界に行っちゃったって訳ね?」

【芹雄】:「ん…俺の世界だという確証はないが、異世界に行った事は確かだろうな。」

【玲奈】:「そ…っか。まぁ…生きてるだけでよしとしますか!」

【リーナ】:「そうですね。」

【ポール】:「あぁ…生きてて良かった。それだけで十分だ。」

【芹雄】:「さってと〜…用事も済んだことだし、帰るとしますか!」

【玲奈】:「え!?もう帰っちゃうの?」

【芹雄】:「ん?…あぁ。もともとデスドラがどうなったか確認しに来ただけだからな。これでも長居した方だ。」

【玲奈】:「そん…な……」

【芹雄】:「なんだぁ?ひょっとして俺が帰ったら寂しい!とかかぁ?」

 『キシシシシ』とからかう様に笑う芹雄。だが…

【玲奈】:「そうよ!!悪い!?」

【芹雄】:「え……」
【リーナ】:「れ…玲奈…」
【ポール】:「…………」

 芹雄と玲奈を残し、他のみんなはどこかに行ってしまった。

【玲奈】:「いや!帰らないで…もっと…ううん、もう少しでいいから…ここに居てよ…私のそばに居てよ…」

【芹雄】:「玲奈…………ごめんよ。俺は君の気持ちには応えられない。」

【玲奈】:「!!」

【芹雄】:「俺の世界には…俺の世界にも俺を待ってくれている仲間が居るんだ。ここに残るということは、そいつらを裏切るということになる。」

【玲奈】:「………う…うぅ…」

【芹雄】:「わかってくれ…」

【玲奈】:「うわあああぁぁぁぁ………」

 暫く…玲奈が泣き止んで落ち着くまでそっと抱いていた。

 

 

【玲奈】:「…っく…」

【芹雄】:「もう、大丈夫か?」

【玲奈】:「あんまり大丈夫じゃないけど…これ以上こうしてたら離れられなくなっちゃう。だから…これでおしまい。」

【芹雄】:「そうか。」

【玲奈】:「さ、みんなに追い付こう。」

【芹雄】:「あぁ。」


 城門…芹雄はここで皆と別れるといった。

【愛蓮】:「本当にここでよろしいんですか?」

【芹雄】:「ああ。折角開かれた宴会だ。楽しんだ方がいい。それに主役が抜けっぱなしというのも悪いからな。」

【ディオ】:「…元気でな。」

【マシュ】:「………達者でな。」

【芹雄】:「ふっ…お前らも精進しろよ。惚れた女くらい守って見せろ!」

【ディオ】:「な!?おっ俺はそんなんじゃねぇ!!」

【マシュ】:「……頑張れよ、ディオバーグ。」

【ディオ】:「だから、違う―――!!」

【芹雄】:「ははははは!!じゃぁな、3人とも!楽しかったぞ!」

【リーナ】:「芹雄さん、お元気で。向こうでのご活躍、期待してますわ。」

【ポール】:「貴方には世話になった。ありがとう。」

【芹雄】:「ん、リーナさんありがとう…おっちゃんは、まぁ前も言ったけど、気にしないでくれ。人として当然の事をしただけだから。これからも頑張って。じゃぁ…」

【玲奈】:「芹雄…」

【芹雄】:「玲奈…まぁ…なんだ。いろいろあんがとな。楽しかったよ。」

【玲奈】:「うん…私も…」

【芹雄】:「そうだ…記念にこれをやろう。レナスも居なくなっちゃったし、必要だろう。」

【玲奈】:「え?…こ、これは!『忍の宝珠』!!マスターの証よ!?」

【芹雄】:「ああ。ほら、リーナさんとおっちゃん分も。後で渡しといてくれ。」

【玲奈】:「いいの…旅が辛くなるわよ?」

【芹雄】:「いいんだ…これがせめてもの俺の気持ちだ。受け取ってくれ。」

【玲奈】:「芹雄……芹雄ッ!!」

 ≪ちゅっ…≫

【芹雄】:「んっ!?」

【玲奈】:「じゃぁね!元気で!!」

【芹雄】:「あぁ!玲奈も頑張れよー!!」


 こうして…異世界『アクエルド』での芹雄の冒険は終わった。
再び始まる自分の世界の冒険に胸躍らせながら、リンクゲートを通る…………
しかし、現実に待っているのは冒険ではなく、美食ツアーだと気付くのはそう遠くない話であった……

第二十五章

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