ルナティックドーン 前途への道標
〜剣士【芹雄】の冒険記〜

〜 第二十八章 〜

お仕事『宅配依頼』



 時はバイラーダス暦975年5月…場所は日紫国深森の町の宿、『旅館 松本』。
芹雄はその冒険者用に作られた酒場兼食堂で、一人で朝食を食べていた。

いつもの通りの4人掛けの席…

【芹雄】:
(何やってんだかな…俺は。)

 溜息混じりにそう呟いた。
もう仲間は3人になったのだ。壁際のテーブルでも良かったのだが。
そも、昨晩気を遣って貰い一人にしてもらったが、あの二人も……特にファンチーヌは辛いであろう。同じ日に仲間として加わりずっと一緒に旅をして来たのだ。
やはり暫くは一人になりたいであろうし、敢て二人とも呼ばずにこうして一人で席に着いたのだ。

【芹雄】:
(別れた次の日いきなり変わってる、というのも考え物だな。)

 そういう結論にして、『俺はまだ冷徹ではないな』と心に言い聞かせる。
しかし、一人しか居ないのに4人席で堂々と食事をするのも他の冒険者に変な目で見られるので席を変える事にする。
席を移そうと盆を持って立ち上がろうとしたその時――
≪ガタッカタッ…≫
同じテーブルの向かいと左の椅子が引かれ、芹雄に向けて話しかけた。

【ファンチーヌ】:
「もー、何で一人先に来て勝手に食べてるかなー。」

【芹雄】:
「え…?」

【奈香】:
「まったく自分勝手で甲斐性の無いリーダーですねぇ〜。」

 と、いつも通りにいつものポジションで席に着く二人。

【ファンチーヌ】:
「あ、すいませーん………私洋食でお願いします。」

【奈香】:
「中華風ありますか?…あ、では竜華でお願いしますー。」

【ファンチーヌ】:
「あら、久々に見るわね。竜華風の朝食。」

【奈香】:
「えぇ。久し振りに食べてみようかなーって思いまして。有って良かったですー。」

 と、何事も無かったかのように何時も通りの昼食の風景を見せる仲間2人。

【芹雄】:
「…」

一方、予想だにしなかった二名の出現と、そのあまりの普通な情景に呆気に取らた芹雄は口は半開き、しかも立とうとした途中の盆を少し持ち上げ中腰で不恰好なまま固まっていた。
別の意味で他の冒険者に変な目で見られている
それに気付いた仲間が変な目で見ながら話しかけた。

【奈香】:
「…芹雄さん、さっきから何を?……空気椅子ですか?」

【ファンチーヌ】:
「何?朝から筋トレぇ?暑苦しいなぁ…っていうか、こんな場所で止めてよねー、恥ずかしいったら…」

【芹雄】:
「いや違っ!……ていうか……大丈夫なのか?」

【ファンチーヌ】:
「あぁ、藍玲のこと?それだったらもう大丈夫よ。」

【奈香】:
「えぇ。私たちはもう完全に吹っ切れましたからー。」

【芹雄】:
「そ…そうなのか…?そういうもんなのか…俺が女々しいだけか…」

【奈香】:
「あ〜それから。藍玲さんが芹雄さんによろしくって言ってましたー。」

【芹雄】:
「会ったんかい!」

 と、ツッコミを入れたところで全員の分が揃ったので、一緒に朝食を取る事にする。
そして食べながら藍玲の事を訊いた。

【芹雄】:
「で…昨日の今日で、いつの間に藍玲と会って話をしたんだ?」

【ファンチーヌ】:
「そりゃ、寝る前に決まってるでしょー?朝来てたら今居ないわよねー?」

【奈香】:
「そうです。ファンチーヌさんったらもうわんわん泣い―――」

【ファンチーヌ】:
「わ、わぁ―――!!ちょっ、そこまで言わなくていいの!!」

【奈香】:
「そうですか?可愛い面もあるというところをアピールしてた方がいいのでは〜?」

【ファンチーヌ】:
「いい!いいって!!……とりあえず今は。」

【奈香】:
「はいはい。そういうことにしておきますー。」

【芹雄】:
「はぁ…そうかそうか。しっかし、リーダーの俺の所には挨拶も無しか…」

【ファンチーヌ】:
「そうじゃないわよ。だから私たちに伝言残してたんでしょー?いい?藍玲はもう婚約者が居るのよ?」

【奈香】:
「旦那さんが居る手前、夜中一人で男の人の部屋に行くのは常識では有り得ませんよね〜?例えそれが芹雄さんでも。」

【芹雄】:
「む…そういえばそうか。」

【ファンチーヌ】:
「凄く感謝してるってさ。色んな事。」

【奈香】:
「と、まぁ。夜通しで色んな事を話しました。それで、まぁ…積もる話も終って別れの挨拶も済んだし、完全に吹っ切れた、という訳です。」

【芹雄】:
「そうか。そういう事なら納得だ。………だが、今の話からすると、お前らあんまり寝てないのでは?」

【ファンチーヌ】:
「そぉよぉ〜。だからさっさと仕事見つけてもう一眠りしたいわー。」

【芹雄】:
「いや…だったら無理に起きてこんでも…」

【奈香】:
「やっぱり藍例さんの事をお知らせした方がいいと思いまして。」

【芹雄】:
「む…そうか…スマンな。」

【奈香】:
「いえいえ。謝れるような事では。」

【芹雄】:
「ああ。俺も今そう思った。」

【ファンチーヌ】:
「とりあえず、食べ終わったら斡旋所に行って仕事探そっか〜。」


 と、いうわけで、仕事斡旋所―――

【ファンチーヌ】:
「何これ……」

 と、ファンチーヌが依頼一覧をみて慄いた。

【奈香】:
「まぁ…なんというか―――」

【芹雄】:
「ここまで見事に無いと逆に清清しいな。」

 あった依頼は『宅配』1件のみ…
他にもあるのだが、すべて引き受け済みの状態…
とりあえず、これではさすがにやっても意味が無いと思った芹雄は仲間に諦めるように言おうとした。

【芹雄】:
「まぁ、仕様が無いだろう。ここは―――」

【ファンチーヌ】:
「そうね…仕方ないけどこれを引き受けましょうか。」

【芹雄】:
「――やめ…って、え"ぇッ!?

【奈香】:
「わぁ。ひょっとしてこのパーティでは初めてじゃないですか?宅配ってー。」

【芹雄】:
「いや、待て奈香――」

【奈香】:
「一人でお金稼いでた時以来ですー。なんか懐かしいですねー。」

【ファンチーヌ】:
「そうね。初心に返るのもたまには必要よね。」

【芹雄】:
「いや、だからまて待て二人と――」

【奈香】:
「じゃぁ、私引き受けてきますねー。」

【ファンチーヌ】:
「うん。お願ーい。」

【芹雄】:
「あの…あぁぁ…」

 そして奈香はカウンターに行き、あっさり引き受け、荷物を受取り戻ってきた。

【奈香】:
「ただいま戻りましたー。」

【ファンチーヌ】:
「おかえりー。で、それが宅配物ね。」

【奈香】:
「そうでーす。届ける品は『グレイブ』、届け先が東方都市の…いつもの宿屋ですねぇ。」

【ファンチーヌ】:
「あの宿?マスターの依頼かな?」

【奈香】:
「いえ、多分お客さんですね。返し忘れた物みたいですねー。」

【ファンチーヌ】:
「そか…うーん、宿で少し寝てからにしようと思ったけど、早く届けた方が良さそうね。」

【奈香】:
「期限は53日ですから、そんなに急ぐ必要もありませんよ?」

【ファンチーヌ】:
「まぁ、早く届いた方が依頼者も持ち主も喜ぶじゃない?」

【奈香】:
「そうですね!じゃぁすぐ準備して出発しましょうか。」

【ファンチーヌ】:
「よし。じゃぁ芹雄。いいかしら?」

【芹雄】:
「いいかしら?も何も…もう引き受―――」

【ファンチーヌ】:
「じゃぁ、部屋に戻ろっか。」

【芹雄】:
「ねぇ、たまには僕の話、ちゃんと最後まで聞いてくださいよ。」

【奈香】:
「芹雄さんもボーっとしてないで早く準備してくださいねー。」

【芹雄】:
「聞けや――――――!!!」


 ――――と、言う事で北の入口…

【ファンチーヌ】:
「おかえりー。」

【芹雄】:
「あぁ…早く乗れ。寝るんだろ?」

【奈香】:
「じゃぁ芹雄さん、よろしくお願いしますねー。」

【ファンチーヌ】:
「おやすみー。あ、襲われたら起こしてくれていいからねー。」

【芹雄】:
「はいはい。おやすみ。」

 ――そして一行は、深森の町・東方都市間の街道、緑波の道を馬車⇒船⇒馬車で移動する。
《緑波の道》……美しい新緑の森と、澄んだ淡緑の海を渡り島を繋ぐ道。怪物が現れる事がある為、注意が必要…
という説明文があるが、一度も遭遇せず予定通り8日で東方都市に到着した。

 そして東方都市…
馬車を降りて、早速依頼を果たす為宿に向かう一行であった。
向かう途中――

【ファンチーヌ】:
「はー、まったく…馬車ってホント暇ねぇ…。」

【奈香】:
「まぁまぁ。景色は綺麗だったじゃないですかー。」

【ファンチーヌ】:
「いくら綺麗でもね…あんなの1〜2時間で見飽きるって!!それが八日よ!?よ・う・か!辛いったらもう…」

【芹雄】:
「なんだったら歩いて移動するか?」

【ファンチーヌ】:
「いや。さすがに遠慮するわ。どうせ無駄だしね。」

【奈香】:
「というか、普通は歩いて移動はしませんよねー。冒険者として。」

【芹雄】:
「まぁ…移動経費なんて高が知れてるし、そこまで貧乏な奴も居ないけどな。普通は。」

【ファンチーヌ】:
「…何…その何かありましたよ、っていう口振り…」

【芹雄】:
「ん?あぁ…あった事は事実だが。安心しろ。さすがに二度もしn―――あ、いや…ゲフッゲフン!!」

【奈香】:
「なっ!?…ななな、なんですか芹雄さん!!ちゃんと最後まで言ってくださいよ!!」

【ファンチーヌ】:
「そうよ!気になるでしょ!」

【芹雄】:
「いやいや、気にしないで…いつもみたいに聞かなかった事にしてくれ。ゲフッ!」

【ファンチーヌ】:
「う"……ここで仕返しするのね…」

【奈香】:
「やれやれ…ちっさい男…」

【芹雄】:
「あっそ。じゃぁ言わない。」

【奈香】:
「いいですよー。「し」は聞こえたんですからー、んー…『死んだ』とかそういう冗談でしょー?」

【芹雄】:
「なんだ。判ったのか…チ…つまらん。じゃぁ、教えてやろう。」

【ファンチーヌ】【奈香】:
「え……?」

【芹雄】:
「いやー、なんか変な野郎が居てさぁ。冒険者のクセに所持金100Gも無いって言うんだよ。 それで金貯める為に仕事する事にしたんだが、その町に仕事が無くてなぁ、隣町に移動しようって話になった。 しかし、そいつ『俺金ないから乗れない』とか言って、馬車の後を必死に追ってくるわけよ。バカじゃないか?と思ったね。 まぁ、時々は確認して後着いて来るかどうか確認はしてたんだが、その内見えなくなってなー。 ちょっと引き返して見に行ったら地に臥して死んでたってわけだ。まぁ、4日もったんだから凄いんじゃないか?バカだけど。」

 と、溜まった鬱憤を晴らすかの如くつらつらと過去の出来事を話し始めた芹雄。
あまりの事に、仲間二人は呆然とし黙って聞いていた。
が、流石に堪らなくなったのか、話が一段落着いたところでファンチーヌが切り出した。

【ファンチーヌ】:
「ちょ…ちょっ、ちょっとまって…」

【芹雄】:
「ん…なんだ?」

【ファンチーヌ】:
「それって、本当にあった話…?」

【奈香】:
「作り話にも聞こえますけど、かなりリアルっぽいですね…」

【芹雄】:
「何を言うか。過去の話だが実話だぞ。死体はとりあえず町に持って行ったけど――」

【ファンチーヌ】:
「む…芹雄にしては…」

【芹雄】:
「ダンジョンの中で捨てて来た。」

【ファンチーヌ】:
「わぁ。」

【奈香】:
「実話確定ですねー…」

【芹雄】:
「だから実話だって言っただろ。」

【ファンチーヌ】:
「でもやっぱり信じられないなぁ…過去に芹雄がパーティ組んでたなんて。」

【奈香】:
「しかも男をパーティに入れるなんて有り得ない…」

【芹雄】:
「そっちかーい!」

 と、見事なボケにお約束のツッコミをいれた所で、宿に到着。

【ファンチーヌ】:
「こんにちわー。」

【女将】:
「はいはい〜、いらっしゃいませ〜…あら?」

【奈香】:
「どうもお久し振りですー。」

【織江】:
「あらあら〜、久し振りねぇ。あ、今主人を呼ぶわね。ダ〜リーン!ちょっと来て〜!」

【芹雄】:
「ダ…ダーリンかよ…」

【マスター】:
「んー?何だなん…おお!お前らか!ずいぶんと久し振りじゃねぇか。今戻ったのかー。」

【ファンチーヌ】:
「あはは…まぁ、戻ったというか…」

【織江】:
「まぁまぁ、立ち話もなんですから入って入って。酒場に行って寛いでてね。今お茶入れてくるから。」

【奈香】:
「あ、どうぞお構いなくー。」

【芹雄】:
「…とりあえず酒場に行こう。そこで用件を話せばいい。」

【マスター】:
「用件…?何だぁ?泊まりに来たんじゃないのかよ?」

 ――宿の酒場――

【マスター】:
「なるほど、宅配の依頼で来たのか。」

【奈香】:
「はい。依頼書にはこの宿に届けるように、と書いていたので。」

【織江】:
「確かに、そういうお客さんはたまに居るけど、最近は見てないわね…大抵の人は挙動不審になるから一目で判るんだけど。」

【ファンチーヌ】:
「うーん…でもとりあえず、預かってくれないかな?依頼書には宿に持っていくだけでいいとしか書かれてないから…」

【マスター】:
「おう、判った。まぁ、こんなケースも珍しくは無いんだ。たまに本気で忘れられてウチの物になったりするしな。」

【織江】:
「あらあら…ダーリン、それはギルドの人たちに冒険者達には密にするよう硬く口止めされてなかった?」

【マスター】:
「あ、そうだった。まぁ、こいつらなら知ってただろうし、別に構わんだろ。」

【奈香】:
「いえ…初耳ですけど…」

【ファンチーヌ】:
「私も。それって多分、芹雄も知らなかったんじゃない?」

 うんうん、と頷く芹雄。

【マスター】:
「……マジで?」

 うんうん、と頷く三人。

【マスター】:
「ギルドには内密にな?」

【奈香】:
「いえあの…別に関係ないので好きにして下さい…」

【ファンチーヌ】:
「知ったところで、別になんとも思わないけど?」

【織江】:
「まぁ、喋ったところでダーリンがギルドからの刺客が送られて来るだけだから、別に大した事じゃないんですけどねぇ。」

【奈香】:
「それって…かなり危ないのでは?」

【マスター】:
「そう思ってくれるのは有難いね。ま、忘れてくれればそれでいい。」

【ファンチーヌ】:
「そういえば元凄腕の冒険者だったわね…そうなると危険なのは向こうね…」

【マスター】:
「そういう事だ。そら、預かるぞ。」

【奈香】:
「あ、はい。ではこのグレイブを持ち主が現れたら返して上げて下さい。」

【織江】:
「私も泊まってるお客さんにそれとなく聞いておくわね。」

【ファンチーヌ】:
「じゃぁ、お願いしますね。」

【マスター】:
「おう。承ったぜ……それはそうと、ずっと気になってたんだが…」

【奈香】:
「え? あ……」

【織江】:
「一人足りない気がするんだけど…もしかして…」

【ファンチーヌ】:
「あ…あはは。まぁ、ちょっとあってね…」

【マスター】:
「そうか…まぁ、冒険者なんだ。そういう別れはあって当然だ。すぐに、とは言わんが気持ちを切り替えて楽しくいかねぇとな。」

【ファンチーヌ】:
「そうね…ありがとう、マスター。」

【奈香】:
「私たちはもう大丈夫です。」

【マスター】:
「…惜しい奴を亡くしたな…」

【芹雄】:
「おいおいマスター。勝手に殺すなよ。」

【織江】:
「いい人だったんですけどね…芹雄さん…」

【芹雄】:
「俺かよ!?」

【マスター】:
「…いい奴は皆死んじまうんだ…この世の中ってやつは。」

【織江】:
「二人とも…大丈夫よ。芹雄さんはきっと空の上から貴方達を見守っているわ…」

【芹雄】:
「ねぇ気付いて?僕の存在。」

【ファンチーヌ】:
「芹雄…私、貴方の分まで頑張ってこの大陸一の剣士になるわ!!」

【奈香】:
「私達の事、ずっと見守っていて下さいね…」

【芹雄】:
(知ってた…この二人がボケるって…俺……知ってた…)

【マスター】:
「なぁ、そろそろ本題入っていいか芹りん?」

【芹雄】:
「誰が『芹りん』やねん!てか急に話を戻すな!」

【ファンチーヌ】:
「藍玲はちょっと前に婚約者と再会出来たので、抜けたのよ。」

【マスター】:
「そうか。」

【奈香】:
「はい。」

【織江】:
「なるほどね。」

【芹雄】:
「……」

【マスター】:
「…ん?なんだ?」

【芹雄】:
「お わ り か よ !!」

【織江】:
「芹雄さん、ちゃんとカルシウム摂ってますか?」

【芹雄】:
「怒りっぽいわけじゃねぇ―――!!」

 と、オチが付いた所で話を切り上げ、依頼終了の報告の為に深森の町に戻る事にした。
≪ガタっ…≫
と、椅子を引き立ちあがるファンチーヌ。

【ファンチーヌ】:
「さてと…それじゃそろそろ報告しに深森の町に戻るわね。」

【芹雄】:
「え!?もう?」

【マスター】:
「ぉ?なんだ、もう行くのか。」

【織江】:
「もっとゆっくりして行かれればいいのに…」

【奈香】:
「いえ、やはり早く依頼主を安心させてあげたいのでー。」

【マスター】:
「そうか。殊勝な心掛けだな。まぁ、(メインの)仕事頑張れよ。」

【ファンチーヌ】:
「え?あ、うん…?あ、ありがとう…」

【マスター】:
「ぁん?……なぁおい芹雄まさか…

【芹雄】:
「訊くな…俺も呆れてる。」

【マスター】:
「はぁ…お前もうちょっと自己主張しろよ…リーダーだろ?」

【芹雄】:
「…努力はしてる。」

【マスター】:
「まぁ…頑張れ(いろいろ)。」

【芹雄】:
「ああ…じゃぁ、またな。」

【ファンチーヌ】:
「それじゃぁね。」

【奈香】:
「それではまたー。失礼しますー。」

【マスター】:
「おう。」

【織江】:
「またのお越しをー。」

 そうして、馬車に乗り込む二人。
馬を走らせる前に芹雄が二人に言った。

【芹雄】:
「なぁ、せめてこの町の斡旋所で仕事受けてからにしねぇ?」

【ファンチーヌ】:
「何言ってんの。他の仕事してる内に忘れたら大変な事になるのよ!」

【奈香】:
「私、指名手配なんか受けたくないですよー。」

【芹雄】:
「あー、はいはい…判った判った……行くぞ。」

そして、来た時と同じ道を逆に行く。
やはり何者も襲って来る事は無く、8日後の夕方…深森の町に到着する。

【ファンチーヌ】:
「はぁ…やっと着いた…」

【奈香】:
「さぁ、早く斡旋所に行きましょう〜。こんな所でへばってる場合じゃないですよ〜。」

【ファンチーヌ】:
「そ…そうね。久し振りの仕事依頼達成を喜びましょうか!」

【芹雄】:
「一番簡単で一番安い『宅配』だけどな。」

【ファンチーヌ】:
「う…」

【奈香】:
「い…いいんです!やり遂げた事が大事なんです!」

【ファンチーヌ】:
「そ…そうよ!こんな所で凹んでる場合では無いわ!」

【奈香】:
「ええ!行きましょう!」

【ファンチーヌ】【奈香】:
「おー!」

 と、二人は気合を入れて先に行ってしまった。
残された芹雄は、『やれやれ』という感じで溜息を吐きながら――

【芹雄】:
「まぁ、あとで更に凹む事になるだろうけどな…」

 と、呟いた。


 ――――宿・斡旋所―――

…に着いた芹雄の眼前には―――
報酬をテーブルの真ん中に置いて、猛烈に後悔して、どん底に叩き落されたかの様に凹んでいるファンチーヌと奈香の姿があった…
そのテーブルだけ物凄く昏いマイナスオーラが発せられていて、周囲が近寄ない為、浮いていたのですぐ発見できた。
そして、いつもの位置の椅子を引き、座って話し始める。

【芹雄】:
「まったく…人の話を聞かないからこういう事になるんだよ。判ったか?」

【ファンチーヌ】:
「ハイ…」

【奈香】:
「よく判りました…」

【芹雄】:
「その前に良く考えろ?いいか、宅配の成功報酬は幾らだ?」

【ファンチーヌ】:
「1500Gです…」

【芹雄】:
「それは一人1500Gか?」

【奈香】:
「いえ、パーティ全員分です…」

【芹雄】:
「そう。一人500Gになる訳だな。」

【ファンチーヌ】:
「ハイ…」

【奈香】:
「そうでした…」

【芹雄】:
「で、ここからが本題だ。」

【ファンチーヌ】:
「ひぅ…」

【奈香】:
「ぅぅ…もう勘弁してくださいぃ〜…」

【芹雄】:
大 却 下。全部聞け。」

【ファンチーヌ】:
「ううぅ…」

【芹雄】:
「で?移動費は出して貰えたか?」

【奈香】:
「…出ませんでしたぁ…」

【芹雄】:
「そうだろう。では深森の町⇔東方都市間の移動費は幾らだ?」

【ファンチーヌ】:
「…一人200Gです…」

【芹雄】:
「そうだな。しかし残念ながら、それは片道分だ。往復分で400Gになる。」

【ファンチーヌ】:
「……うっ…うぅっ…」

【芹雄】:
「報酬から移動費引いた分が今回の収入だ…これで何が出来る!?あ"!?

【奈香】:
「うわぁぁぁぁん!!ずびばぜんでじだぁ〜…」

【芹雄】:
「16日もかけて出た収入が100Gって何や!?馬車代にもならんわ!!」

【ファンチーヌ】:
「うぇぇ〜…もう勘弁してよぉ〜〜反省してるってばぁ〜〜…」

【芹雄】:
「これからはちゃんと俺の言う事聞けよ!判ったか!!」

【ファンチーヌ】:
「うぅ…わかりましたぁ〜…しくしく…」

【奈香】:
「うぇぇ〜…はいです〜ご免なさいですぅ〜…」

【芹雄】:
「ふん!俺は飯食って寝る!じゃぁな!!」

 という事で、散々な結果に終った宅配依頼でしたとさ…

 

 
ちなみに、この後『女泣かせ』『酷いリーダー』などの、芹雄の悪評が広まった事は言うまでも無い…

【芹雄】:
「また俺か!俺が悪いんか!!」

…ちゃんちゃん。


久々の仕事は散々な結果に。
この後、二人は宅配依頼を完全に『どうでもいい』と思うようになった、というのは風の噂……
さぁ、次はいよいよ新キャラ登場か!?ついにこのパーティの崩壊の危機!!
次回、【機動戦士 ルナティックドーン 0083∀ダブルワルツディスティニー】

 『萌える漢』

ちゃんとネタ考えろ!芹雄!!

 
頑張ります…というかスイマセン、上のタイトル等は冗談です(当然)… orz


第二十八章

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