〜 第九章 〜
危険な道
芹雄:「さて…明日、最初の船に乗りたいんでとっとと寝てしまいましょう!」
藍玲:「了解アルー!オヤスミ〜!………」(くー…くー…)
芹雄:「早ッ!」(のび太並!?)
ファンチーヌ:「まぁ、無理も無いわね。最近は宿にも泊ってないし野宿の連続だったからこういうちゃんとした宿泊所で寝るのは久し振りだからね。」
芹雄:「あ"…そうか…すまない…もっと気を遣うべきだったな…」
ファンチーヌ:「あぁ…そういう意味で言ったんじゃないわよ。下手に休んで時間とお金費やすよりマシよ。それに…少なくとも私は嫌じゃないわ。」
芹雄:「そうか。そう言ってもらえると助かる。…さ、もう寝よう。明日は早い。」
寝ようとしたその時、外が騒がしくなった。起き上がったファンチーヌを制し、表に出る芹雄。藍玲はまったく気が付かず寝ている。 船着場兼宿泊所の入口に向かおうとする武装した船員を見つける。
芹雄:「何かあったのか?」
船員:「見張りがここに向かってくる旅人を襲っている盗賊を見つけたんだ!助勢に行く!」
芹雄:「って…兵士くらいいるだろう?」
船員:「今、ここの兵士は出払ってて、自分達しか居ないんだ!だからって見過ごす訳にも、見捨てる訳にもいかんのでな!あんたら客は大人しくそこで待っててくれ。」
そう言い残し、走り去った。相手は盗賊団である。普通の雑魚モンスターより遥かに強い。警備兵ならともかく、いくら海の男でも戦闘のプロではない彼らではかるくあしらわれるだろう。
芹雄:(盗賊か…泥棒だったらゴブリンと同じだから弱いんだけどな…仕方ない。助勢に行くか…)
無論、盗賊だろうが泥棒だろうが芹雄にとっては雑魚同然。相手にならない。かといって止めなければここも襲われる。というわけで助勢に向かう。が、背後から声をかけられる。
ファンチーヌ:「…助けに行くの?」
仲間のファンチーヌだった。
藍玲:「ふぁ…何かあたアルかぁ〜…」
…いや、正確には寝ぼけて外に出て来て欠伸している藍玲もいた。
ファンチーヌ:「止めておいた方が良いわ。相手は武装した盗賊団…人の命の事なんて考えない残酷な奴等よ…殺されるわ。ここは警備兵に任せて――」
芹雄:「警備兵は今居ないそうだ。」
ファンチーヌ:「えっ…」
芹雄:「だから今は船員達が戦いに行ってる。多分やられると思う。」
藍玲:「そうなると明日の船、動かせられないアルね…」
どうやら目が覚めたようだ。
芹雄:「そうだな…あと、多分ここも襲われると思う。よって、ここにいても仕方ないので助けに行く。二人は待っててくれ。」
藍玲:「一人で行くアルか?そうはさせないアル!」
ファンチーヌ:「そうよ!芹雄一人に危険な目に逢わせる事は出来ないわ!私達は仲間なのよ!」
藍玲:「そうアル!ワタシもその料理たらふく食べるアルー!」
まだ寝ていた。
《ズビシッ!》
ツッコミとしてかるくチョップを入れておく。『プシュ〜』と藍玲のデコから煙(?)が昇る。
藍玲:「あぅ、痛い〜…あれ?なんで外に居るアルか?豚の角煮は?」
漸く完全に目を覚ましたようだ。一応、説明はしておく。
芹雄:「しかし…危険だ。」
ファンチーヌ:「待ってても死ぬだけなら、まだ戦って死んだ方がマシだわ!」
藍玲:「3人で戦えばなんとかなるアルよ!」
芹雄:(やっぱ退かなかったか…まぁいいか。)「よし…では行くぞ!」
馬車に装備を取りに行き、現場へ向かう。既に戦いは始まってるようだ。
芹雄:「いいか、俺が前衛で攻撃するから2人は武器の持つ射程を考えて敵から少し離れて攻撃するんだ。そうすれば敵の攻撃はまず当たらない。」
藍玲・ファンチーヌ:「了解!」
盗賊達の目の前に踊り出て進行を妨げる芹雄達。盗賊団は【日紫山賊】8人…予想以上の人数だった。芹雄は余裕綽々だが、仲間の二人は人間と ――しかも武装した残忍な盗賊と――戦うのは初めてのだろう。少し震えている。
芹雄:「これ以上、お前等の好きにはさせん。俺らが相手になる。」(ちょっと格好良いな、俺。)
船員:「あ…あんたは…さっきの…」
盗賊A:「なンだ、テメェは?変な格好した忍者だなぁ… おまけに後ろの二人も似たような物被ってんじゃねェか…へン、だっせぇの。」
いきなり格好のことを言われた。ちょっとムカッとキた芹雄。
盗賊B:「邪魔すンじゃねぇよ!どきな!テメェ等と遊んでる程暇はねぇんだよ!」
無言で構える芹雄。
盗賊C:「へッ…!どうやらちょっとばかし痛い目を見なきゃわかんねェらしいな!……オラァッ!」
盗賊は芹雄に向かって持っている刀で斬りかかった!
《ドシュッ!!》
ファンチーヌ:「あぁッ!芹……え…?」
『ドサ…』芹雄が斬られる前に盗賊Cの頭が芹雄の足元に落ちた。
芹雄:「遅いな…これならまだオークの攻撃の方が速いんじゃないか?」
盗賊D:「…ンだとぉ…!ナメんじゃねぇぞ、この野郎ッ!」
挑発して矛先を自分に向ける。
盗賊B:「上等だ!テメェから先に血祭りに上げてやるァ!死に曝せ!」
残り全員一斉に攻撃してくる。が、攻撃を食らう前に先に芹雄が動き、3人倒す。しかし残り4人の攻撃は食らった。
藍玲:「せ…芹サンッ!」
芹雄:「藍玲!ファンチーヌ!今のうちに攻撃ッ!」
ファンチ-ヌ:「は…解ったわ!……せいッ!」
藍玲:「い…いくアルよ〜!たぁぁッ!」
盗賊E:「なにッ!し…しまった…!うわッ!」
2人の攻撃が盗賊Eに決まる!………しかし、致命傷には至らない。
盗賊E:「!? …………いつつ…なんだ…テメェら二人は弱いんじゃねェか!なら、先にこっちを片付けてやるぜ!」
藍&ファン:「ヒッ…!」
冷たい視線と鋭い殺気に竦む藍玲とファンチーヌ。しかし、その傍ら…
『ドサドサドサ…』3つの体が地面に倒れる。さっきのやり取りの内に芹雄が3人倒していた。
盗賊E:「なッ!…く…くそ!こいつらだけでも道連れにしてやるッ!」
藍&ファン:「嫌ぁぁぁ!!!」
盗賊E:「へ…へへへ。怯えてやがるぜ!この女共はよ!オラァ!死ねェ!!」
《ザッ!ガィン!…ズシャッ!》
芹雄が素早く二人の前に立ちはだかり、降魔の利剣で刀を受け止め…受け流してそのまま斬った。凄まじい威力で断末魔の声を上げるまでもなく絶命した。
多少のダメージは受けたものの、難なく蹴散らした。が、二人はまだお互い抱き付いて震えている。
芹雄:「おーい、二人とも。終わったぞ〜。大丈夫か?」
恐る恐る顔を上げ芹雄に向ける。仲間だと判った瞬間、緊張を解きへなへなと崩れた。
芹雄:「二人とも。良く頑張った!やはり皆の力を合わせればなんとかなるもんだな!」
ファンチ-ヌ:「確かに頑張ったけど、全員貴方が倒したじゃないの…しかも全員1撃で…」
藍玲:「そうアルよ…ワタシ達の攻撃、ぜんぜん効かなかたアル…芹サン、凄く強いアルね…」
芹雄:「まぁ、鍛えてたからな。あと、伊達に両手剣を使ってる訳じゃない。攻撃は最大の防御、だからな。一撃で倒せば反撃されないだろ。」
藍玲:「威力はわかたアル。けど確か何回か攻撃されて…あ!傷!ダイジョブか!?」
芹雄:「あぁ…別にそんなに大きな傷は負ってないよ。」
ファンチ-ヌ:「で、でも…あんなに斬られたんだから…ほら、血が出てる。」
芹雄:「これも筋力・敏捷を鍛えてる所為だな。守備と体力が高いから簡単に死にはしない。ま、これでも普通の人間だからな。血は出るさ。」
藍玲:「でも…これだとワタシ、足手纏いアル…」
ファンチ-ヌ:「そうよ。私だって冒険の邪魔になるわ。」
芹雄:(きたよ…これだからあんまり強いとこ見せたくなかったんだよなぁ…) 「いやいやいや。大丈夫だって。さっきだって十分役に立ってたんだから。邪魔だとか足手纏いだ何て思ってないよ。」
ファンチ-ヌ:「………でも…」
芹雄:「気にすんなって!判らないと思うけど仲間がいるのといないのとでは全然違うんだぞ! 一人の時、どんなに寂しく辛かったことかッ…!う…うぅぅ………」
前のことを思い出して泣き出す芹雄。
芹雄:「だからさ…そんなこと考えずに付いて来てくれないかな?」
藍玲:「芹サン…わかたヨ。ワタシは芹サンの仲間としてしっかりついて行くアル!頑張って強くなって役に立つアル!」
ファンチ-ヌ:「じゃぁ、私も。強い剣士を目指す者として、きっとあなたの役に立ってみせるわ!」
芹雄:「その意気だ、二人とも!では怪我した船員達を回収して宿泊所に戻るぞ!」
藍&ファン:「了解ッ!」
怪我した船員達を起こし、手当てを始めた二人を尻目に、芹雄は戦利品集めに没頭。盗賊団全員の持ってた金を没収。占めて1.463G。あとでバレて3人で分けた。
宿泊所に戻り、船頭や船員に礼を言われたり、襲われてた旅人からも挨拶と礼を言われた。村や町ではなかったので宴会はされなかったのが残念。
藍玲:「風が気持良いアルー!!」
と思ったが、藍玲はいつも通りなのだった。
ファンチ-ヌ:「―――やっぱり次は「討伐」依頼を受けるの?」
強さを知った(とはいってもまだ半分くらい)ファンチーヌが、そんな事を訊いてきた。
芹雄:「…ん。いや、当分はこれ(宅配・買物)でいくさ。やっぱり二人に強くなって貰う事にした。」
ファンチ-ヌ:「そう……」
芹雄:「あぁ…、別に二人が弱いと言ってるんじゃなくて。目標が出来た。『仲間を強くする』っていうね。特にしたい事無いし。」
藍玲:「じゃぁ、頑張って強くなるアル〜!一緒に【天下一武闘会】で優勝するアル!」
何気にしっかり話を聞いてた藍玲。
ファンチ-ヌ:「天下一武闘会か…やっぱり目指すはそこよね。」
芹雄:「そうか…そういうのがあったな。よし!天下一武闘会に向けて強くなるぞ〜!」
一同:「おー!」
――――そのやりとりを物陰から隠れて見ている集団があった……
これは何者なのかッッ!イカ字号!基、以下次号ッ!!
了